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第40話

白石さんを待ち始めて、どれくらい時間が経ったのか分からないけれど。漫画を読み出したら止まらなくなったオレは、立ち読みに集中しすぎていたらしく。 「……っ!?」 背後に人の気配を感じたかと思えば、急にイヤホンを外されて。オレがびっくりして振り向くと、そこには白石さんが立っていた。 「お待たせ、いい子で待ってたんだな。メシは、食ってきた?」 「えっと、うん……」 小さく返事をしたオレに、白石さんはちょっと待ってろと言って種類の異なる缶コーヒー二つと煙草を買って。どこで待っていればいいのか分からないオレは、白石さんの後をちょこちょこと着いていくけれど。 「……さてと、ドライブにでも行くとするか」 そう言った白石さんの発言に引っかかりを感じながらコンビニの外へ出ると、春の夜風に吹かれたオレは少しだけ肌寒く感じた。 でも、白石さんはコンビニの駐車場に駐めてあるブラックカラーの車にスタスタと近づいていって。 「ん、乗って」 当たり前のように言われた言葉に、オレはびっくりしてしまったんだ。 高校生になったばかりのオレはてっきり、これから電車に乗ってどこかに連れ去られると思っていたのに。白石さんが車を所持していることに驚いて、そして運転免許を取得していることに驚いて。 オレはドキドキしながら車に近づくと、少し迷って後部座席のドアに手を伸ばした。 「お前なぁ……前座れ、前」 けれど、オレを見ていた白石さんは笑いながらそう言うと、助手席のドアを開けてくれて。オレは更にドキドキしながらも、助手席に乗り込むと緊張して身を縮める。 「あのっ、えっと、お邪魔します」 車の中は、白石さんの甘い香りが漂っていて。 オレはなぜか真っ赤になりながら、助手席に座ってシートベルトを締めていく。 「これ、お前はお子ちゃまだからカフェオレな」 そんなオレに白石さんが手渡してくれたのは、ブラックの缶コーヒー……ではなく、ホットのカフェオレだった。 「……あったかい、ありがとうございます」 寒さを感じていたオレの身体を温めるように、手の中に収まったカフェオレにホッとする。カコンっと音を立てながらプルタブを開けたオレは、白石さんにお礼を言ったけれど。 「どういたしまして。んじゃ、とりあえず出発すんぞ」 心の準備が何もできていないオレはカフェオレを飲みながら、白石さんの方をチラっと覗き見るのが精一杯だった。 ショップで会ったときとは違う、気怠い雰囲気の白石さん。柔らかそうな髪が白石さんの頬を隠して、白石さんの表情をしっかりと見ることはできない。 でも、ハンドルを握る手はスラッとしていてとても綺麗で。運転している白石さんを見て、オレは素直にかっこいいなって感じてしまったんだ。 「………お前さ、俺に聞きたいことあるか?」 どこに向かっているのか予想ができないし、オレは何をされるか分からないのに。そんな不安を吹き飛ばすくらいの優しい声で、白石さんはオレにそう言った。

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