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第41話
白石さんに聞きたいことは、きっといっぱいあるんだろうけれど。いざこうして問い掛けてられてしまうと、何を質問したらいいのか分からなくて。
とりあえず、オレはこの状況に合った話を振ってみることにした。
「白石さんって、車の免許持ってたんですね」
「……あぁ、18になってすぐ取り行った。けど、この車は兄貴のお古だ」
「え、白石さんって兄弟いるんですか?」
知らないことだらけだからか、白石さんがオレに気を遣ってくれているからなのかは分からないけれど。思いの外、話が弾むように進んでいくから。
オレが驚きつつも白石さんに問い掛けると、白石さんは笑いながら片手で煙草の箱を手に取った。
暗い夜を赤く灯すのは信号機で、車はゆっくりと停止する。その間に白石さんは煙草を咥え、そして火を点けていく。
「俺には二人兄貴がいて、長男は27、次男が24、そんで俺。因みに俺の下に、お前より一つ上の妹がいる。だから俺は、四人兄弟の三番目な」
パッと微かに明るくなった車内は、すぐに元の暗さに戻ってしまうけれど。一瞬見えた白石さんの表情が大人っぽくて、オレは妙にドキドキしながら感想を述べる。
「そうだったんですね。オレ、白石さんっててっきり一人っ子だと思ってました……なんか、俺様感が半端ないから」
眉間に寄った皺も、片目を瞑ったときの長い睫毛も。心惹かれる表情とか、白石さんが持っている雰囲気とか。俺様っていうのとは異なるのかもしれないけれど、オレから見た白石さんは大人なイメージが強くて。
オレが思っていることを素直に伝えると、白石さんは再び車を走らせつつ苦笑いを漏らした。
「俺様感ってなんだよ、それを言うなら俺より光の方が上だから。アイツは昔から、わがまま放題、やりたい放題してっから」
……兄ちゃんが、俺様。
オレには優しくて、いつも笑顔を絶やさない兄ちゃんなのに。俺様ではなく、兄ちゃんはやっぱり王子様の方が似合うと思うのに。
イメージと全然違う兄ちゃんの話をされて、オレは無意識に俯いてしまうけれど。
「光は、お前がアイツのことを誰よりも尊敬してることに気付いてる。だからお前の兄貴ってのを壊さないために、光はお前の前では優しいんだよ」
白石さんはそう言って、俯くオレの頭をポンポンと優しく撫でてくれて。オレはそれに甘えるようにして、本音を零してしまうんだ。
「オレ、兄ちゃんに無理させてるのかな……兄ちゃんはいつでも優しくて、オレを守ってくれていたけど。それは、それはつまり、オレの前では無理してるってことですよね」
「光は自分の意志で、お前の前では王子様やってんだ。お前が気にすることじゃねぇーし、アイツはむしろお前の兄貴って立場を楽しんでると思う」
「兄ちゃんは誰にでも優しくて、好かれてて、本当にキラキラ輝く王子様だと思ってました……オレ、ちょっと複雑な気持ちになっちゃいます」
「不特定多数の人間には、基本的にそうだけどな。でも俺ともう一人、優(すぐる)ってヤツがいるけど、俺と優に対してはすげぇーわがまま王子」
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