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第42話
白石さんは運転しながら、俺の質問に真面目に応えてくれる。昨日の印象とはまた違う白石さんに、オレは心を許しているのかもしれない。
誰にも言えない兄ちゃんへの気持ちを話しても、白石さんはオレの想いを否定しないから。意地悪な表情をすることもなく、落ち着いたトーンで話してくれる白石さんはチラッとオレを見て。
「……知りたくなかったって顔してるけど、やっぱショックか?」
少し心配そうにオレに尋ねてきた白石さんの声が、あまりにも優しく響くから。
「うん……でも、知れて良かったと思う。兄ちゃん、あんまりオレに友達のこととか話さないから。白石さんのことも、兄ちゃんから聞いたことないもん」
ショックを感じている暇なんて、今のオレにはないんだって。オレは自分に言い聞かせるみたいに、白石さんにそう言った。
「まぁ、そうだろうな。光は広く浅くって感じの付き合い方するし。人のことは詳しく聞くクセに、自分のことは話したがらないし」
……確かに、兄ちゃんってそうかもしれない。
「でも、白石さんともう一人の優さんって人とは兄ちゃん仲良いんですよね?」
「……んー、俺より優の方が光のことは良く知ってると思う。俺は高校からの付き合いだけど、優は中学から光と一緒らしいからな」
優しく接してくれる白石さんに漬け込んで、オレは兄ちゃんのことをもっと知ろうと奮闘する。そうでもしないと、オレは白石さんに弱音を吐き続けてしまうような気がするから。
「あの、優さんってどんな人なんですか?」
キュッと握り締めた両手は、オレが悪いことをしている自覚がある証拠だ。じんわりと手のひらに広がる汗が気持ち悪くて、オレは白石さんに申し訳なさを感じてしまうけれど。
「なんというか、インテリ眼鏡だな。光の奴隷ってか、執事的なポジションで脳内がオッサン」
白石さんからの返答は、オレの予想の斜め上を通り過ぎていってしまった。罪悪感に似た感情を覚え始めていたオレの心を正常に戻したのは、意味不明な単語が並ぶ説明文で。
考えることを一旦止めたオレと、煙草の火を消した白石さん。車内に訪れた沈黙は重く、オレは窓の外の景色に目を向ける。
すると。
「………俺も、お前に訊いていい?」
沈黙の時間を破って、白石さんは缶コーヒーに手を伸ばす。何を訊かれるんだろうと思うオレは、少しだけ緊張して。
「えっと、どうぞ」
そうは言ったものの白石さんの顔を見れないオレは、白石さんと同じようにカフェオレに口付けてみたけれど。
「お前が光を好きだって思い始めたのは、いつから?」
カフェオレを喉に流し込む前に問われたひと言で、オレの手は止まった。喉を潤すことができないまま、傾けた缶を縦に戻して。
オレは戸惑いながら、ゆっくりと話し始めたんだ。
「……好きだって気付いたのは、小学6年生くらいのときです。オレは小さい頃から人見知りで、人形だってからかわれてて。でも、いつも兄ちゃんがオレのことを守ってくれていたから」
「それはさ、兄弟として好きだって思ったのか?」
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