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第43話

「んーっと、最初はそうだったと思います。オレはまだ恋とかしたことないから、この想いが恋愛感情なのかは分からないけど……でも、兄ちゃんはオレにとって特別な人ってのは確かです」 特別な存在、大切な人。 それは確かなことだけれど、言葉にしてみるとオレの気持ちは思っていた以上にぼんやりと霞んでしまうから。 「兄ちゃんが好きだって、気付いて。でも、兄ちゃんは男で、俺も男で兄弟で。だから好きって言っちゃいけないんだって。白石さんに言い当てられて、すごくびっくりしました。でも正直、白石さんにしかこんなこと話せないから……」 オレが思っている複雑な心境を白石さんに正直に伝えると、白石さんは真っ直ぐに前だけを見てこう言った。 「お前が話したい時に、話してくれればそんでいい。お前は俺に逆らえねぇーけど、話くらいならいくらでも聞いてやるから」 「あ、ありがとうございます」 オレには拒否権がない白石さんとの関係でも、オレに全くメリットがないわけではないらしい。その証拠に、白石さんはオレの話を優しく受け止めてくれている。 それがオレにとって、どれだけありがたいことなのか……きっと、オレが感謝の言葉を述べたところで白石さんには伝わらないと思うけれど。 それでも、オレは白石さんに向けてぺこりとお辞儀をして。なんだかよく分からない感情を抱きつつ、まだ少し温かみが残るカフェオレを飲み込んだ。 強いコーヒーと、優しいミルク。 どちらも相まって口の中に広がる苦味と甘味、それはオレの隣で車を運転している白石さんみたいだなって。そんなことを思ったオレは、ふふっと微笑んでしまう。 「……カフェオレ、そんなに美味い?」 「へ、あ……うん、美味しいです」 白石さんのことを考えて、オレは笑ってしまったけれど。その姿を見ていたらしい白石さんは、どうやらオレがカフェオレを飲んで笑っていると勘違いしたようで。 それもあながち間違いではないから、オレは素直に頷いた。 「そっか、なら良かった……って、お前さ、なんで今日ショップに来た?俺、すげぇーびっくりしたんだけど」 「オレも、びっくりしました……弘樹に買いたい物があるから付き合って欲しいって言われたから、オレは付き添いで寄っただけなんですけど」 「その弘樹ってヤツには、光みたいな気持ちにはならねぇーの?」 兄ちゃんの話からカフェオレの話になって、その後はショップの話と流れは次々に変化する。でも、白石さんの問い掛けでオレたちの話題は最初へと戻って。 「弘樹は、幼稚園のころから一緒だから。傍にいるのが当たり前だし、なんとも思いません。弘樹もそれなりにオレのことを庇ってくれたりしたけど、弘樹には兄ちゃんみたいな気持ちにはならないです」 「ふーん……んじゃ、本当にただのダチか」 オレの中での位置付けを確認するように、白石さんは兄ちゃんと弘樹のことをオレに尋ねてきたけれど。納得した様子で呟いた白石さんは、どこだか分からない駐車場に車を止めてしまった。

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