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第44話
「着いたぞ」
夜のドライブには、目的地があったらしい。
オレは車内から周りを見渡して、あからさまにキョロキョロとしてしまうけれど。
「俺ん家、前のマンションの五階だから、とりあえず車から降りろ」
白石さんにそう言われ、オレはびっくりして車から飛び降りる。
そんなオレを見て、白石さんは笑いながら後部座席のドアを開け、そこからスーパーの袋を取り出すとそれを持って家まで先に向かってしまって。オレは一人で慌てながらも、白石さんの後ろをちょこちょことついていった。
二人でエレベーターに乗って五階まで向かう間、オレが緊張で固まっていたことは言うまでもないと思う。
「ここ、入っていいぜ?」
「あの……お、お邪魔します」
五階の一番端のドアを開け、そう言った白石さんに促されるようにオレは一歩を踏み出して。緊張しながら白石さんの家に足を踏み入れたオレは、二歩目を出すことを忘れて立ち止まった。
白石さんから香る爽やかで甘い匂いが部屋中に漂っているからなのか、白石さんのお家が綺麗だからか分からないけれど。
……どうしよう、なんか、すごくドキドキする。
「突っ立ってねぇーで、中入ってくんねぇーか?」
「……あっ、ごめんなさい」
後退りも前進もしないオレを笑って、白石さんはオレより先に靴を脱ぐと家のドアをパタリと閉める。ついでに、しっかり鍵も閉められてしまい、オレはゆっくりと白石さんの後を追った。
「狭い部屋で悪ぃーけど、そこのソファーにでも適当に座って寛いでて」
白石さんの部屋は、白と黒でまとめられたシックな感じのインテリアで揃えられていて。ソファーとベッドとテレビ、小さなテーブルにノートパソコンがあるくらいで、とてもキレイな印象だった。
一部屋に全てが揃っている、こういう間取りをきっとワンルームマンションって言うんだろうって。そんなことを考えつつも、ソファーの端っこに腰掛けたオレは白石さんの様子を窺う。
すると、白石さんはテーブルに置いてあったヘアゴムで髪を束ねて、腕まくりをし、キッチンに立った。
結びきれていない襟足と、少しの前髪。
ハーフアップって、女の子がする髪型ってイメージがあったけれど。
……白石さん、似合いすぎです。
ふんわりした髪が結われたことで、白石さんの整った顔がさっきよりも際立って大人の色気を感じさせられる。そんな白石さんの姿をかっこいいと素直に思ってしまったオレは、なぜだか分からないけれど頬を染めてしまったんだ。
「俺、メシまだだから適当に食っていいか?せっかく連れて来たのに、お前暇だな……テレビ観ててもいいし、とりあえずお前は好きなことしとけ」
「……えっ、いや、暇じゃないです。白石さんがご飯作るとこ、見ててもいいですか?」
白石さんが料理をするってだけで驚きだし、オレは興味深々で。オレが白石さんに尋ねると、白石さんは好きにしろって笑って慣れた手つきで料理を始めた。
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