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第47話

運転する白石さんも、キッチンに立つ白石さんも。なんだかすごくかっこよく見えて、料理もすごく美味しかったから。 白石さんは兄ちゃんと違い、しっかり自立しているんだって、単純に尊敬してしまう部分も垣間見えたんだ。 白石さんとは、昨日会ったばかりなのに。 昨日会ったばかりの人だから、オレは白石さんのことをもっと知りたくて興味が湧くのかもしれないけれど。でも、オレが白石さんのことを気にしているのは確かだった。 実家暮らしの兄ちゃんと、一人暮らしの白石さん。免許は取得しているけれど車は所持していない兄ちゃんと、お兄さんのお古でも自分の車を運転する白石さん。家事全般は母さんに任せっきりの兄ちゃんと、自分独りで全てを行う白石さん。 生活スタイルが個々に異なるのは当たり前で、ソレだけが全てではないことは分かっているつもりだけれど。 つい先日、高校生になったばかりのオレがニ人を比較してみると、どう考えても兄ちゃんより白石さんの方が大人だと思った。 今までは、兄ちゃんがとても大人に見えていたのに。白石さんと比べてしまうと、兄ちゃんはなんだか子供っぽいのかなって感じてしまう。 オレは、なんでさっきから白石さんのことばかり考えているんだろう。白石さんを利用して、兄ちゃんのことを聞き出そうと思っていたのに。 白石さんから教えてもらえた、兄ちゃんのこと。でも、兄ちゃんって、お友達の白石さんでもつかみどころのない人なのかもしれない。 兄ちゃんは、昔から本当に王子様みたいな人だったのに。オレは、もしかしたら兄ちゃんに気を遣わせてばかりなのかも……そう思うと、小さく溜め息が漏れてしまうけれど。 白石さんは、兄ちゃんが好きでやってることだから、気にしなくていいって言ってくれたんだっけ。 何気なく言っただけ、かもれしれない。 けれど、オレが白石さんの言葉に救われたのは確かなんだ。 自分だけじゃ埋められない小さな傷に、白石さんが優しく絆創膏を貼ってくれたような……そうして、傷が癒えていくような気分。 オレが勝手に兄ちゃんに期待していて、そうして勝手に落胆しただけなのに。白石さんの優しさは、オレの心に穏やかな光を灯すんだ。 そんな白石さんが、オレにとって良い人なのか、それとも悪い人なのか……オレはまだ、白黒はっきりつけられない。 ソファーに置いてあるクッションを抱き締め、白石さんで埋め尽くされた空間に心地良さを感じながら、用意されたココアをゆっくりと飲み干し、オレはたくさんのことを考えていく。 いつの間にか、兄ちゃんから白石さんへと思考が移り変わっていることにオレは気がついたけれど、今は知らないフリをして。 自分の視野が狭かったことを痛感したオレは、身体に蓄積された疲労に負けてゆっくりと瞳を閉じていってしまったんだ。

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