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第51話
【星side】
……オレは、オレは一体いつから白石さんにキスされていたんだろう。
寝ていたはずの頭は飛び起きたけれど、現状の把握はできないままで。息をするのがやっとなオレを見て、白石さんは僅かに濡れた唇を親指で拭う。
「苦しかった?」
余裕そうな表情で尋ねられて、優しく髪を撫でられて。拒否権がないらしいオレは、白石さんを見つめて呟くことしかできないのに。
「当たり前、です……って、分かってるならこんなことしないでください。オレが寝ちゃったことに怒ってるなら謝りますからっ、だから」
「別に、怒ってねぇーよ。お前さ、俺が怒ってお前にキスしたとでも思ってんのか?」
「違う、の?」
オレがいい子にできなかったから、オレが勝手に寝ちゃったから……だから白石さんは怒って、オレにキスしたんだって。そう思い込んでいるオレの意見を、白石さんはあっさり否定して。
「怒ってたら、ソファーで寝てたお前をわざわざベッドに運んだりしねぇーから。それに、すげぇー気持ち良さそうな反応してたのは、お前の方だ」
「あ……えっと、はい?」
どうやら、白石さんは怒っていないらしく、オレをベッドに運んでくれたってことは理解できたけれど。その後に付け加えられた言葉の意味が分からなくて、オレは白石さんをまじまじと見つめてしまった。
でも、オレのその判断は間違っていたようで。
「分かってねぇーなら教えてやるから、大人しくしとけ。まぁ、本当に嫌なら逆らっても構わねぇーよ」
「え…っ、ん…ちょっ」
抵抗する暇もなく、オレは白石さんからのキスを受け入れるしかなくなってしまったんだ。
意味が分からないから、だからちょっと待ってくださいって……そう言いたくても言えないし、身体に力も入らない。
分かるのは、白石さんにキスされているってことと、オレの身体が少しずつ熱くなっていることだけ。
「ッ、ん…ぁ」
触れ合う唇を甘噛みされて、そのすぐ後にやんわりと舌先で噛まれた箇所を撫でられて。その刺激に耐えられないオレは、空いている手で白石さんのシャツを掴んでしまったけれど。
深まりかけたキスの雨が止み、オレがそっと目を開けると。そこには、なんだかとても苦しそうな表情をする白石さんがいて。
「俺にこんなことされたくねぇーなら、この手離せ……今なら、まだ間に合うから」
鼻先が触れ合う距離でそんなことを言われても、オレはどうしたらいいのか分からないから。
「でもっ、オレ……白石さんに掴まってないと、頭がふわふわして、おかしくなりそうで……だから、そのっ」
嫌だって思うよりも、抵抗しなきゃって考えるよりも。今のこの状況で縋れる相手は白石さんしかいない事実に直面しているオレは、白石さんから手を離すことを拒んでしまう。
この手を離したら、白石さんが遠くへ行ってしまうような気がして……キスされることよりも、この先どうなのるか分からない不安よりも、オレは何より、独りになることを恐れて。
上手く説明はできないけれど、オレは必死で呟くと白石さんのシャツを握る手に力を込めたんだ。
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