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第50話

……異常者、変質者、奇人変人、変わり者。 今の俺にはおそらく、この手の言葉がお似合いだ。一般的なモラルが守れるほどの余裕がないのはすでに理解済で、それならクズ野郎に徹しようと意味が分からない理由をつけて。 不純……この場合は同性行為か、と。 これまた意味不明なことを思いつつ、俺は眠る星の頬をつつく。 同じ男とは思えない肌質、指が頬に吸い付いていくような感覚は若さからくるものなのかもしれないけれど。清潔感溢れる柔らかな頬は触り心地が良く、俺はリラックスグッズを手にしたように和み始めていくが。 煙草を咥えながら俺が星の頬で遊んでいても、弄られている当の本人は未だに夢の中のようで。 反応がないことに面白味を感じなくなってきた俺は煙草の火を消すと、起きないことを好都合にして本格的に星で遊び出す。 とりあえず、俺は星の上に跨って。 ベッドが沈む感覚を味あわせてみたものの、爆睡している様子の星は俺が上にいることに気づかない。 額にキスをしても、ソファーからベッドへ移動させても、頬をつついても、今から犯されてもおかしくない状態になっても……全ては、起きないコイツが悪いから。 一定のリズムで繰り返している呼吸を奪うように、俺は星の唇に口付けていった。 「…っ、ん」 ゆっくり、けれど確実に。 呼吸が僅かに乱れ始め、そうしてようやく反応を見せた星は吐息を漏らしながら瞳を開けて。 「はぁ…っ、白石、さ…」 「わりぃーな、起こしちまったか?」 「……ごめんなさい、オレ寝ちゃってて」 夢と現実の区別がついていないのか、この状況を理解するまでに時間がかかっているのか。理由は定かじゃないけれど、寝込みを襲う俺に謝る星が単純に可愛く思えるから。 眠たそうな重い瞼を開け、謝罪する星を軽く無視した俺は、星の耳に唇を寄せニヤリと微笑み呟いた。 「今からするコトに、拒否権ねぇーから」 拒否権はない、と。 そう縛りつけて、俺だけのモノになればいいと。一瞬、そんなことを思いそうになった自分の心に気づかないフリをして。 「へ、あの……しらっ、ぃ」 寝起きで戸惑う星が俺の名を呼ぼうとしていたような気がするが、俺はそれを遮り有無を言わさず唇を塞ぐ。啄むようなキスを何度か繰り返してやると、星のカラダから力が抜けていくのが分かった。 「ぁ…んっ、はぁ」 俺からのキスを抵抗することもなく、まるで受け入れるかのような反応をする星は遊び甲斐があるんだが。 俺が遊びのつもりでも、星を悪いようにはしないと最初に伝えたこともあり、俺は反応を楽しみながらも星の髪を撫でていく。 本当に嫌なら、いつでも抵抗できるように。 星の両手を押え付けることはせず、俺はその代わりに暇を持て余している左手で星の耳に触れた。 「あっ、ン…んんっ」 すると、一際大きくピクンっとカラダを震わせた星はベッドのシーツをキュッと掴んでいて。まだ序盤も序盤のキスだけでいっぱいいっぱいになっているらしい星に、一旦休息を与えるため俺は唇を離してやることにした。

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