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第62話
ご飯を食べ終えると、白石さんは洗い物をしてコーヒーを淹れていた。オレが片付けますって言ったら、準備してくれたから片付けは俺がやるって言ってくれて。
今は白石さんと一緒に、ソファーでのんびりしながら飲み物を片手にお喋りしている最中なんだ。
「白石さんって、どうしてこんなに料理上手なんですか?」
食後のデザートならぬ、食後のココアまでオレに用意してくれた白石さん。でも、そんな白石さんが料理上手な理由が気になって。オレが白石さんに問い掛けると、白石さんは煙草を咥えて答えてくれる。
「高校ん時、バイトしてたカフェのマスターに教えてもらったから」
「あれ……白石さんって、兄ちゃんと同じ高校ですよね?あの高校ってバイト禁止、でしたよね?」
答えてくれたのはありがたいけれど、オレが疑問視する回答をくれた白石さんは平然としている。
白石さんが兄ちゃんと同じ高校に3年間通っていたなら、白石さんは高校の規則でバイトは許されていないはずなんだ。高校時代の兄ちゃんは、校則でバイト禁止だからお小遣い上げてって母さんに頼んでいたから。
「あー、お前よくあの学校バイト禁止なの知ってるな。表向きは知人の手伝いだったからいいんだよ、そんなもん」
……そんなもんって、校則違反してますけど。
「白石さんって、本当に19歳?」
「年齢詐欺はしてねぇーよ、免許証でも確認すっか?」
煙草を吸いながらそんなことを言われても、説得力がない。お酒と煙草は20歳になってからのはずなのに、白石さんが煙草を吸っている姿があまりにも様になり過ぎていて……白石さんが校則違反していたどころか、法律違反していることをオレは忘れていた。
「……なんか、白石さんは見た目も落ち着いてるから、25歳とか言ってもバレないと思います」
思ったことを口に出したオレは、チラッと白石さんの方を見るけれど。
「それさ、褒めてんのか貶してんのかどっちだ?」
流し目でオレを見る白石さんと視線がぶつかってしまい、オレは慌てて目を逸らして。
「老けて見えるとか、そういう意味で言ったんじゃないです……あ、そう言えば弘樹が白石さんのことかっこいいって言ってましたよ。あんな大人になりたいって」
フォローの仕方が間違っている気がするけれど、オレは必死で白石さんにそう伝えた。
「そりゃ、どうも」
お礼は返ってきたものの、それは随分と素っ気ない。白石さんの機嫌を損ねてしまったのかなって、ちょっぴり不安に思ったオレは俯いてしまう。
でも、そんなオレの顔をクイッと指で上げさせた白石さんはオレにニヤリと微笑んで。
「お前は俺のこと、カッコイイって思ってくんねぇーの?」
……この人は、なんでこういうことを平気な顔をして言ってくるんだろう。
今まさに、かっこいいって思ってる。
本当は、淡い瞳に捕えられてドキドキでいっぱいだけれど。
「えっと……その、料理してる白石さんは、かっ……かっこいい、です」
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