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第61話

白石さんが色々と用意をしてくれて、テーブルには見事なモーニングセットが完成する。 二人並んでソファーに座り、両手を合わせて。 「……いただきますっ!」 しっかりと挨拶したオレは、楽しみで堪らないオムレツをひと口頬張った。 「白石さんっ、とっても美味しいです!!」 ふわふわでトロトロ、オレが求めるオムレツの味。白石さんが作ったオムレツは、本当に美味しくて……ほっぺたが落ちるって、今のオレのことを示すんだって思ったけれど。 オレの隣りで食事を開始した白石さんは、オレが作ったオムレツを食べると複雑そうな表情をみせて。 「もう少し早く、手助けしてやりゃ良かった……星のは火が通り過ぎてる、お前も食べてみるか?」 白石さんはとても冷静にオレに告げると、オレの口にひとくちサイズにしたオムレツを放り込んできた。 「……んー、本当だ。オムレツのトロトロさがなくなっちゃってる……やっぱり、難しいですね」 モグモグと口を動かした後、オレは感想を述べた。白石さんが作ってくれたオムレツと味が違うことを、自分なりに受け入れなきゃいけない。 もっと練習しなくちゃって、そう心に決めた。 自信はないけれど、白石さんに手助けしてもらったおかげで、ちょっだけコツは掴めたような気がするから。やってみなくちゃ分からないって白石さんに背中を押してもらえて、オレの気持ちは前向きになった気がするんだ。 「コツさえ掴めればなんとでもなるし、これでも充分美味いから俺は満足だけどな。お前と二人で作った副菜も良い味してるし、パンも美味いし」 「白石さんが教えてくれて、本当に一緒に作ってくれたからこんなに豪華な食卓になったんですよ」 オレの力は不足しているけれど、そこに勇気や楽しさを与えてくれのは白石さんだから。自分が作った料理を美味しいって言ってもらえるのはやっぱりすごく嬉しいけれど、肝心なのは二人で作った朝食ってことで。 オレが思ったことを白石さんに伝えると、白石さんは少しだけ照れくさそうに笑ってこう言った。 「豪華かどうかは分かんねぇーけど、お前が笑ってくれるならそんでいい」 「オレ、今とっても幸せですもん。美味しいものを食べたとき、人は笑顔になるんですよ。だから、今のオレに笑うなって方がムリな話なんです」 二人で作って、二人で同じものを食べる。 家族と食卓を囲んでいるときとは違う、とても穏やかで幸せな時間に包まれているみたいで。オレは真剣な顔をして白石さんに話しているつもりでも、頬は勝手に緩んでしまうのに。 「バーカ、可愛い顔して笑うなって」 オレは白石さんに頭をわしゃわしゃと撫でられて、髪がボサボサになっていくけれど。白石さんにバカだと言われても、悪口を言われてる感覚は全くなくて。 「白石さんだって笑ってるから、お互い様だもん」 終始和やかな雰囲気で彩られた朝食の時間は、オレと白石さんのたわいもない会話で溢れていた。

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