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第80話

風呂に入れたのはいいものの、風呂上がりの星が着込めそうな服がないことに気がついた俺はクローゼットを漁る。 1泊2日の予定で荷作りをしてきた星は、替えの服を持っていない。そもそも、こんなことになるとは互いに思っていなかったのだから当然の話だ。 雨に濡れた服は洗濯をして、コインランドリーで乾燥させれば数時間後にはどうにかなるが……その繋ぎの時間に、アイツに何を着せるべきか無駄に悩む俺は自分でもバカだと思う。 俺のパーカーくらいなら羽織れば着れるだろうし、上の服については問題なさそうだが。 難点なのは、下着だ。 とりあえず、服は洗うとして。 星がシャワーを浴びている間に、アイツの着替えを適当に用意してやり、ホットココアを入れつつ俺は煙草を咥える。 ……今から近くのコンビニまで出向き、俺は下着を購入すべきだろうか。 男同士なのだから、見えてても関係ない……と、思いたいけれども。下着の一つで変に意識してしまっている今の俺に、一般的な解答を望んでも無駄だった。 車中の星を思い返すだけでも、アイツのあの色気は何だったんだと自分に問い掛けることしかできない。 可愛いは正義、なんてのは空論で。 可愛い男の子に翻弄されそうな俺は、脱ぎたくても脱げない濡れた衣服を着用したままぼんやりと煙草の先端を見つめていた。 下着を買いに出るとしても、俺も一旦シャワーを浴びてから行動したい。グダグダ考えるよりも、下着の件は事情を説明したあとに直接本人に訊い方が早いような気がしてきたとき。 バスタオルを頭から被り、ダホダボの服を着た星が現れたのだ。 俺が適当に用意しておいた服に身を包んでいる星だが、ただの俺のTシャツは星が着るとワンピースになる。上から羽織ったパーカーから手は少しも出ておらず、Tシャツから覗く脚はすらっとしていてとてもキレイで。 ………なんか、すげぇーエロい。 狙って着せたわけじゃないのだが、思っていた以上に俺を殺しに掛かってくる星の姿はエロいけれども。 「……白石さん、下の服がない」 困惑気味の星はもごもごと口を動かし、事実を俺に告げてくる。言われなくとも理解していることをこうもハッキリ言われてしまうと、恥ずかしくなるのは俺の方。 「あー、今、洗濯してっから。あとでランドリーに乾燥だけしにいくけど、気になるならコンビニで買ってくる」 「えっと、わざわざ買いに出てもらうのは悪いので……他の服が乾いてからで、その、大丈夫です」 「じゃあ、申し訳ねぇーけどとりあえずその格好で我慢してくれ。俺、シャワー浴びてくるな……ココア入れてあるから飲んどけ、カラダあったまるから」 「……ありがとうございます」 星は小さくお礼を言うと、頭からタオルを被ったままちょこんとソファーに座り込みクッションを抱えてココアを飲み始めた。 気まずい空気を感じながらも、星のそんな姿を見て俺は内心ホッとする。しかし、心ここに在らず状態の星を放っておくわけにもいかず、俺は星を待たせないために素早くシャワーを済ませたのだ。

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