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第81話

シャワーを浴び終え部屋に戻ると、星はソファーに三角座りでクッションに顔を埋めていた。 ……コイツ、パンツ履いてねぇーこと忘れてやがる。 ワンピース状態の俺の服から覗く太腿は、星が少し動くだけで尻まで見えそうな勢いなのに。そんなことを気にもせずに丸まっている星は、俺が部屋にいることに気づいていないようで。 「……星?」 「あ、白石さん……っ、ぅ」 俺がひと声掛けると、星はゆっくりと顔を上げる。けれど、その瞳は潤んでいるように見えたから。どうすることが正解なのか考える暇もなく、俺は星の隣に腰を下ろしたんだが。 「オレ……っ、どうしたらっ、いいか……わかん、ないっ」 俺がソファーに座り込んだのが先か、星が俺に抱きついてきたのが先か。今まで堪えていたものが溢れだすように、星は俺に勢いよく抱きついたままポロポロと泣き始めてしまった。 「兄ちゃんが好きなのにっ、なんでオレは……白石さんに触れられると、気持ちいいの……なんで、もっとって思うの、白石さんはっ……男の人なのに、なんで……オレっ、変なの……変、なんでっ」 ボソボソと鼻を啜りながら必死に喋る星の頭を撫でつつ、俺は返答に困りながらも言葉を紡ぐ。 「なんでかは俺にも分かんねぇーけど、俺もお前と同じ気持ちだ。だからお前は変じゃねぇーよ、大丈夫だ」 我ながら説得力のない台詞を吐き、俺は星を抱きしめる。上手く伝えてやれる言葉があるなら楽なのに、恋愛感情に振り回される感覚を最近知ったばかりの俺には、そう言ってやるのが限界だったんだ。 「……でもっ!!」 納得できないとでも言いたげに、星の潤んだ瞳は真っ直ぐに俺を見て反論してきやがって。 「でも、じゃねぇーんだよ、バカ。俺が大丈夫っつったら、大丈夫になんの……けど、今は泣きたいだけ泣け。どこも行かずに側にいてやっから、大丈夫」 「ぅ、しらっ……うぅッ」 そう言った俺に星はぎゅっと抱きついて、声を上げて泣いてしまう。部屋の中は星の泣き声と土砂降りの雨の音が響き、泣き続ける星を俺はただそっと抱きしめていた。 俺が星にしか感じることのない気持ちを、コイツも同じように持ち合わせてくれているのだろうが。急な心の変化に頭が追いつかず、気持ちを整理する暇もコイツにはなかった。 それもこれも、成り行きに任せた俺が悪い。 出逢ってからがあまりにも早足で、けれど星はそれに付き合ってくれていたから。 どんなに可愛くて、エロくても、それが現在進行形だとしても。俺にもっとしてとキスを強請っていたことも、今だって自ら俺に抱き着いていることも……ついでに、パンツ履いてねぇーことも。 色々と指摘する箇所はあるけれど、星はまだ子供だ。 ……かく言う俺も、まだ19歳なんだけどよ。 何処か冷静な頭は自分自身にツッコミを入れ、己の行いを反省する。しかし、俺に抱きつき泣いている星の体温は暖かくて……そろそろ本当に限界かもしれないと、俺は途切れそうな理性を保ちながら星の髪を撫でていた。

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