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第136話
オレが選んだのは、最初に手に取った物と同じシリーズの商品。でも、それはイチゴの香りではなく桃の香りがするらしい。
ピンク色だから、桜の香りかと思ったけれど。桃の香りも甘くて美味しそうだなって思ったオレは、白石さんのお言葉に甘えて。
泡風呂体験ができる商品をゲットしたオレは、購入した商品を手渡してくれた白石さんに深々と頭を下げた。
「白石さん、ありがとうございますっ」
「ん、そんなに感謝されるようなことしてねぇーけどな。まだ他に見る物あるなら付き合うから、とりあえず頭上げろ」
そう言われ、オレが顔を上げると。
少しだけ照れ臭そうに笑う白石さんと視線がぶつかり、なんだかオレも恥ずかしくなってお互いに頬を緩ませてしまった。
そのあとは色々と興味を持ったお店を見て回ったけれど、購入するまで至らなくて。広いショッピングモール内を歩き回ったオレと白石さんは、休憩がてら少し遅めの昼食を摂ることにしたんだ。
「……俺が適当に店決めちまったけど、お前はここで良かった?」
人でごった返していたフードコードを通り過ぎ、落ち着いた飲食店をセレクトした白石さんに大人しく着いてきたオレが、二人がけのケーブル席に着いたとき。
向かいの席で白石さんから問い掛けられたオレは、こくこくと頷いた。
「大丈夫です。お店の雰囲気もゆったりしてるし、何よりワッフルが美味しそうだから」
白石さんから差し出されたメニューを見つめ、心惹かれるワッフルにオレは胸をときめかせていく。
主食にはパスタやオムライス、デザートのイチオシはワッフルで、ドリンクのオススメは紅茶。メニューに釘付けになるオレの目は、白石さんを視界に入れることはないけれど。
「白石さんって凄いですよね。オレ好みのお店というか、憧れのお店というか……なんて言えばいいのかよく分からないんですけど、オレは嬉しいです」
弘樹と出かけるとき、オレが落ち着いた飲食店に入りたくても中学生の男子二人じゃ入りづらくて……今までのオレは結局、フードコードで昼食を済ませていたから。
今はランさんのお店ではないけれど、ちょっぴり大人な気分になれる飲食店に足を踏み入れることができたオレは、ルンルン気分で白石さんに話していく。
「お前はホントに、メシのことになるとすげぇー素直だな。この時間だとフードコードは席取り合戦しなきゃなんねぇーし、ゆっくりできる場所の方がいいだろ」
「確かに、それはありますね。でも、フードコード以外にもごはん屋さんはいっぱいあるじゃないですか。中華とか、和食とか……それなのにどうして、イタリアンカフェを選んだんですか?」
「単純に俺がイタリアン好きだからってのと、お前は色々食いたいタイプだろうと思ったから。セットメニューが充実してる店なら、選ぶ楽しさもあんじゃねぇーかと思って」
たかが昼食、されど昼食。
白石さんがそこまで考えて動いていたなんて、オレはちっとも想像がつかなかった。
「やっぱり、白石さんは凄いですよ……んー、手作りキッシュのセットか、オムライスのセット、どっちにしよう」
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