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第1話

「先生、クリスマスイブはどうする?」  十月に入った当たりから、設楽はことある事にそう訊いてくる。  付き合って初めてのクリスマス。最初設楽がそう訊いたときは、大竹は「何でイブ?二十五日がクリスマスだろ?」と真顔で返し、「じゃあ今まで付き合ってきた彼女とは、イブと当日、どっちでデートしてた?」と訊いたら、「クリスマスの辺りに彼女がいた(ためし)がない」と返された。  うぅ、なんかそれも可哀想なような……。いや、そんな先生の過去の女はどうでも良い!!そうだ!クリスマスだ!俺と先生のクリスマスだ!! 「付き合って最初のクリスマスだよ!最初!長い人生でこれから何度もクリスマスを迎えるとしても、初めてのクリスマスは今年だけだよ!」 「……二年目のクリスマスも、三年目のクリスマスも、一度ずつだと思うぞ?」 「そういう問題じゃない!」  妙に興奮に彩られた設楽の顔を見る度に、大竹は大仰に溜息をつき、「初めてだろうが何だろうが、高校生の間はしないから」と冷たく切り捨てる。 「でもまぁ、そうだな。クリスマス当日は終業式で、会議だの打ち上げ込みの忘年会だのがあるから、確かにイブの方が時間に余裕があるな。今年のイブって何曜日だ?」 「水曜日!」 「あ~、じゃあ普通に学校あるな……。その日はもうどこ行ってもだれかに会う可能性あるし……。じゃあ学校終わったらうち来て貰うんでも良いか?」 「もちろんだよ!」  なんとなく大竹がやっつけな感じがしてそれも少々……イヤ、相当切ないが、イベントで盛り上がる先生というのもイメージと違うし、これはいつものことだと諦めるしかない。  それでもイブを先生と一緒に過ごせるのだ。  恋人達のメリークリスマスだ!  設楽はワクワクしながらプレゼントを選び、洋服を新調して、その日を楽しみに待った。

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