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第2話
そして待ちに待ったクリスマスイブ。学校が終わると設楽は速攻で家に戻り、服を着替え、いつもはフワフワととっちらかる髪をウォーターワックスでセットし、プレゼントのラッピングを指で整え、母親に「俺出かけてくるから!」と叫んで家を出た。大竹の家は設楽の家からだと電車を一回乗り継がなければいけないが、それでも四十分ほどで到着する。
時間は六時四十五分。いつも学校を六時に出る大竹が、残業や寄り道をしていなければもう帰っているはずだ。
チャイムを鳴らすとすぐにごそごそと音がして、学校のスーツからフォーマルカジュアルに着替えた大竹が出てきた。
「あれ?ジャケット?」
家でまったりクリスマスをするのに、先生わざわざオシャレしててくれたんだと思うと、設楽は頬を緩めてバフっと大竹に抱きついた。
「先生メリークリ…」
「挨拶は後で良いから。時間無いから行くぞ」
「は?」
え?だって、クリスマスはどこ行っても誰かに会うからって言ったの先生じゃん?
「え?なに?ケーキでも買いに行くの?」
大竹はコートを羽織りながらさっさとドアに鍵を掛け、設楽を駐車場に連れて行く。促されるまま車に乗ってシートベルトを掛けるなり大竹は車を発進させた。どこ?どこ行くの?と慌てている設楽を後目に、大竹の車は高速に乗った。
「え?どこ行くの?」
「都内だと誰かに会うから、勝沼のワイナリーのレストラン予約しといた。今から出て、八時半までにはレストラン入るから。飛ばすぞ」
「……え」
八王子インターから勝沼まで、普通に走れば約五十五分。首都高はこの時間だから当然混んでいて、八王子インターまでの時間は読めない。
ま、マジデスカ!
「な、なんで!?なんで勝沼!?あ、こないだ行ったワイナリーの、直営のとこ!?」
「お前あそこのレストラン入ってみたいって言ったじゃねぇか。それに勝沼まで行けば、さすがに誰にも会わないだろ」
「言ったけど、でもあそこ高そうだったし、第一先生車あるから酒飲めないじゃん!泊まりならともかく、明日終業式は!?」
「だから、八時半にレストラン入って、飯喰って、速攻で帰ってくるんだよ」
「マジデスカ!!」
「んだよ、一時二時までは起きてたって平気だろ?若いくせに」
「それは平気だけど、先生は平気なの!?」
「人をジジィ扱いするな」
首都高はさすがに所々渋滞していて、大竹はそのたびにイライラと車線変更を繰り返していた。ようやく八王子インターを抜けてぐっと車が流れ出すと、大竹はもう一度「飛ばすぞ」と言い置いて、それから本当にアクセル踏みっぱなしで勝沼に向かった……。
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