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第15話 ゾンビみたいに

結局灰谷に電話することもできず、辺りをグルグル歩き回った。 どうする?どうしよう。 ああもう。 イヤんなる。 オレにできることなんてないんだよ。 いや、ヤらねえって言ってたし灰谷。 んでも、ホントに明日美ちゃんから帰りたくないって言われてあいつに断れるか? 男なら断らないだろ。つうか断れねえだろ。 ああ~。 ホントに想像力ってやつはやっかいだ。 家には帰れない。 じっとしていられない。 ぐるぐるぐるぐる。 何をしているんだと思うけどやめられない。 情けない情けない。 歩き疲れて目に入ってきたのは灰谷たちとよく行くゲーセン。 もしかしたらと思ったけどさすがに女連れじゃあ来ないだろう。 もしいたとしてどうするっていうんだオレ。 シューティングデームを探す。 バンバンバン。 ああ、撃ち殺したい。 硬貨を積み上げ、片っ端から撃ちまくる。 死ネ死ネみんな死ネ。女死ネ。 死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ。 ゾンビみたいに殺っても殺っても起き上がってくるオレの気持ち死ネ。死ネ。死ネ。 もう……なんか……。 ゾンビにガツガツと食いつかれる。 ……死んだ。 画面に大きく<GAME OVER>の文字。 できるならとっくにやってる。 殺して埋めて。殺して埋めて。何度も何度も。 でも立ち上がってくるんだゾンビみたいに。 ――オレもヤっちゃえばいいのか。 不意にそんな考えが浮かぶ。 女と……違うな。 つうかヤられちゃえばいいのか。 男に……。 ヨゴレちゃえばいいんだ。 つうか男に抱かれて、それでヨゴレたことになんのかな。 それこそだたの性欲処理だろ。 ああ~。もう。 ゲーセンの中は空気が悪くて、雑音に満ちていた。 途方にくれるってのはこういうことを言うのかな。 動けない。どこへもいけない。 息をするたびに胸がイタイ。 成長期の女子か! 会心のツッコミ! ……。 笑えない……。 一ミリも笑えない……。 ゲーセンを出てフラフラと歩く。 家に帰るしかなかった。 でも、どうにも気持ちがおさまらない。 そうだ!酒を飲もう。 飲んで眠っちゃえばいいんだ。 目についたコンビニに入る。 手当たり次第にビールやらチューハイの缶をカゴにガンガン入れる。 レジに持っていくと店員がオレをちらりと見て「申し訳ございませんが未成年の方にはお売りできません」と言う。 イラっ。 オレだってオレみたいなのがレジに来たら同じこと言うと思うけど。 でも、イラッ。 「オレ、未成年じゃないんすけど」 「じゃあ身分証をお願いできますか」 いやそうだけど。酒ぐらい飲ませろや。 「ああゴメンゴメン。オレオレ。あとこれも足して」 背後から声がした。 見ればスーツ姿の若いサラリーマン風の男で、カゴの中にチータラを入れてきた。 「身分証いりますか」 「いえ」 「童顔って言われててもさすがに十代には見えないよな」 男はオレの肩を叩いて笑いかけた。 さわやかな笑顔だった。 「チータラ好きなんだよ」 なんだこいつ。 男は金を払うと「悪い。持って」とレジ袋をオレに持たせると先に歩き出した。

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