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第66話 ペアピアス
真島のやつ調子に乗りやがって。
用を足しながら灰谷は思った。
今まで女の話なんてしたことがなかったのに突然ベラベラとしゃべり始めた。
そしてあの煽り。
『明日美ちゃんのほうがカワイイでしょ?』だ?
『早く帰ってこいよ。こっからがいいとこだから』だ?
ったく。
トイレの入口で結衣と出くわした。
結衣が灰谷に気づいてニコリと微笑んだ。
その右耳に見覚えのあるピアス。
「それ……」
「え?」
「ピアス」
「あ、これ?」
結衣はピアスに触れた。
「真島くんがくれたの。あ、灰谷くんのもステキだね。これと同じブランド?」
「クロムハーツ」
「クロムハーツ?え?じゃ、すごく高いんじゃ」
「まあ……結構するね」
「え?どうしよう。そんなのもらっちゃってよかったのかなぁ。いいねって言ったらつけてくれたから」
「……」
嬉しそうな顔をして結衣がトイレに入っていった。
バイトの初給料でデザイン違いで買ったピアスだった。
はじめは二人とも片耳だったけど、それからまたお金を貯めて、もう一つずつ買って、また穴をあけ合った。
――あげちゃうんだな。
真島のやつ、気前いいじゃん。
ペアピアスか。
明日美が言っていたように二人の付き合いは順調のようだった。
佐藤の言うように結衣ちゃんは海で会った時より確かにカワイくなっていた。
でもな……。
真島のわかりやすすぎるくらいわかりやすい変化に灰谷は違和感を感じていた。
それに一週間会えないセフレってのはどうなったんだろう。
もうあれから一週間以上経ってるだろ。
それはやっぱあの、城島って男じゃないのか?
はあ~。
灰谷の胸の中でモヤモヤがぐるぐる渦を巻いていた。
ぐるぐるぐるぐる。
真島のことを考えると最近いつもこうだった。
ふー。
灰谷はため息をついた。
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