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第72話 ケンカ

「ただいま~」 結衣ちゃんと明日美ちゃんが帰ってきた。 「買ってきたよ~」 「どうしたの。なんかあった?ケンカやめて灰谷くん」 明日美ちゃんの声で灰谷が手を離した。 「真島くん、大丈夫?」 結衣ちゃんが駆け寄ってきた。 「大丈夫大丈夫。お~こわ。明日美ちゃん、灰谷、欲求不満みたいだよ。ちゃんと相手してやってよ」 「オマエ!」 灰谷に肩をつかまれたと思ったら、次の瞬間オレは床に転がっていた。 頬に痛みが走る。 「痛っ」 口の中に血の味が広がった。 「ふざけんなコラ」 一気に頭に血が上り、灰谷に飛びかかる。 「そっちこそふざけんな」 手と足が出る。 いろんな感情が噴出して止まらない。 人の気も知らないで。 何だコイツ。何だコイツ。 チクショー。 ――バシャッ。 冷たっ。 何?水? バケツを持った明日美ちゃんが立っていた。 「二人とも、やめて!」 * 灰谷と離されて結衣ちゃんと二人、二階のオレの部屋。 「ヒックヒック」 結衣ちゃんが泣きながらオレの唇の端に消毒液をつける。 「ツっ……」 「痛いの真島くん」 「ん?ちょっと切れてるだけだし。大丈夫だよ。それより、泣かないで結衣ちゃん。大したことないし」 「ケンカしないで……」 「ごめんね」 バンソーコを貼ってくれる結衣ちゃんの頭を撫でる。 「他は?痛いとこない?」 最初に一発、頬に食らっただけで、後はつかみ合って何発かパンチやケリが入ったぐらいで水かけられたので、そうたいして痛くはなかった。 まあそれも酒が入ってるし、多少興奮しているせいなのかもしれない。 後から痛むかもしれないけど。 「大丈夫」 それにしても灰谷の顔。 ――あの顔。 あいつ、マジで怒ってた。 オレに。 あの……目。 なんか……あ~ムラムラしてきた。 アドレナリン? あ~なんかたまんねえ。 ああ~灰谷。 灰谷。 灰谷。 結衣ちゃんの頬にキスをする。 「真島くん?」 口にチュ。 結衣ちゃんをベッドに押し倒す。 「どうしたの?やめて」 「大丈夫」 「下に明日美と灰谷くんいるし」 「大丈夫だって。しばらく来ないよ」 Tシャツの中に手を入れる。 「やめて」 「オレのこと嫌い?」 目を見て言った。 「好きだよ」 「じゃあ、させて」 「ダメ」 「いいじゃん。ちょっとだけ……」 キスをしようとしたら、結衣ちゃんが首を振ってイヤイヤをする。 「どうしてもダメ?」 「ダメ」 オレはパッとカラダを離す。 「じゃあいいよ。一人でするから出てって」 オレは背を向けた。 「真島くん……いつもそんなこと言わないのに」 「ごめん、早く出てって」 困らせてるのはわかるけど、オレも余裕がない。 結衣ちゃんがモジモジしている気配がする。 「……真島くん」 結衣ちゃんがTシャツの裾を引っ張った。

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