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第97話 ん?こいつ…。

帰り道。 フラフラと歩きながら灰谷は考えた。 結局オレって……ダメなやつだ。 泣いてるだろうな。 泣かせちゃったな。 もしあの時、明日美から告白された時、佐藤が言ったように真島が明日美のことを好きだったとしたらオレはどうしただろう。 たぶん……明日美と付き合わなかっただろう。 「あたしは真島くんと灰谷くんを取り合ってた」 明日美の言葉を思い返した。 ガキのころからいつも一緒にいて、いるのが当たり前で。 自分の十七年の人生を振り返っても、そこにはいつも真島がいたから。 そのことになんの疑問も感じたことはなかった。 親友と彼女は違う。 それはわかってる。 でも、どちらが大事かと言われれば、迷いようがなかった。 真島だった。 明日美を失うより、真島を失うほうがつらい。 結局のところ、そういうことなのかもしれない。 気がつけばまた真島の家の前に立っていた。 終わったかな断捨離。 部屋に電気はついてるな。 灰谷は真島家のインターホンを押した。 * 「おーい、どうよ。ときめきの断捨離は?」 ん?下で玄関のチャイムが鳴ったと思ったら灰谷が顔を出した。 「ときめきを断捨離したらダメだろ。ってあれ?灰谷どした?さっき帰ったばっかだろ」 「いやあ、さっきじゃねえよ。結構経ってるって」 「そっか?どした?」 「いやあ~家帰って、ちょっと外出て、気がついたらオマエんちの前にまた立ってたわ」 「なんだそれ」 「つうか、全然片付いてねえな。オレ帰る前とほぼいっしょじゃん。よっ」 灰谷はベッドの空きスペースに飛んだ。 「そんなことねえよ。あっちが捨てるサイドでこっちが残すサイドだろ。明日ゴミ捨てれば結構スッキリするはず」 「へえ~。つうか今、マンガ読んでたじゃん」 「いや、ワンピ、ドレスローザ編おもしれえなと思ってさ。読み始めたら止まんなくなっちゃって」 「そんなことしてりゃあ終わんねえわ。ドレスローザ?オレはマリンフォードの方がいいかな」 ん?こいつ…。 「灰谷」 「あ?」 「なんかあった?」 「え?」 「あったろ」 「ねえよ」 オレは灰谷の顔を見つめた。 「ねえって!」 「そっか」 オレにまでポーカーフェイスって……相当だな。 「灰谷、コンビニ行かね?」 「え?」 「なんか飽きてきたし。気分転換」 オレは大きく伸びをして首をグルグル回した。 「いいけど」 「なんか一個買ってやるから」 「子供か!」

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