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第118話 海

雨宿りしていたコインランドリーを出てから多分、一時間位。 やっとたどり着いた海は――オレの頭で思い描いていた海とは――まるっきり違った! ザザーン。 海ぃ~。 ままならないオレの心のバカヤロー。 と叫べるような(叫ばないけど)海ではまるでなく。 こういうの何て言うの? 人口の入江?湾? わからん。 申し訳程度の砂浜にゴツゴツした人工的な岩場、静かな波がチャプチャプしている――のを柵ごしに見る感じ? いや、こういうんじゃなくて、ほら、湘南みたいな?江ノ島みたいな? あれ?そうすると前にみんなで行った海水浴場みたいになっちゃうのか。 ここは遊泳禁止みたいだし。 こんなんでいいのか? まあでも、どんなんでも、海は海だよな。 どっかから浜に下りれないかなと自転車を押す。 陽はあるけど時間的には多分もう夕方近いし、人もまばらだった。 キャンプ場?がある。 あ~もしかしたら海浜公園のどっか一部なのかもしれない。 砂浜に降りて腰を下ろす。 うん。 潮風。海のニオイ。 地平線。 穏やかな、穏やかすぎる海。 はあ~。 暑~い。 足がダルい。 太ももパンパン。 何気に腕も痛い。 つうか汗ダク。 ダクダク汁ダク。 ペットボトルの水をグビグビ。 買ってからしばらく経つからもうヌルかった。 海。 灰谷と二人で来たかった海。 あの日、たどり着けなかった海。 空は青い。 暑さと疲労感で頭が空っぽになる。 波の音が聞こえる。 寄せては返す。 息吸って吐いて。 静かに呼吸しているオレのカラダ。 目を閉じる。 息吸って吐いて。 息吸って吐いて。 目を開ける。 青い空を白い雲がゆっくりと流れて行く。 ――たとえ。 たとえそれが地獄でも、城島さんの言う新しい地獄だったとしても。 オレは、あいつが――灰谷がいる世界が、灰谷がいる地獄がいいから。 オレはちゃんと伝えたい。 もし、これで、あいつとダメになっても。 ダメになっても。 今までみたいにそばにいられなくなったとしても。 うん。 そういう事だ。 うん。 始めからわかっていた。 うん。 「だああああ~っ」 オレは手足を伸ばした。 飛ぶぜマジマッティ! 違うか。 ググゥーッ。 腹が鳴った。 さて、帰るか。 オレは立ち上がり、ケツについた砂を払った。

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