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第147話 ペローン

長渕ナイトに備えて長渕聞いたりダラダラ話しながら課題やって、休憩つってお菓子食ったり。 母ちゃんが作ってくれたミートソース食ってカレー食って、あっという間に一日が終わり。 泊まって行けばと誘ったのだが、課題に疲れたのか、明日の追いこみを考えてか、サトナカは帰って行った。 「灰谷は、泊まってく…だろ」 「おう。当然。中田にも言われたし、オマエのケツ叩かねえと」 「おう……」 サトナカといる時はなんでもないのに、なんだか二人きりになった途端、少し恥ずかしくなってしまうオレ……。 いかん、乙女化している。 「灰谷、シャワーでも浴びてくれば、オレ、課題やってるし」 「そっか?んじゃあ、そうするか。節子~シャワーお借りしまーす」 灰谷が台所に声を掛けた。 「どうぞ~灰谷く~ん」 母ちゃんの声が返ってきた。 婿チック……。 いやいやオレ……。 「一緒に入るか?」 ニヤけ顔の灰谷の腹にオレはパンチする。 「グフッ」 「今度言ったら、殺す」 階段を駆け上がる。 あの冗談、笑えねえ。 課題。 明日中に終わらせて、明後日、夏休みの最後にはマジハイサトナカで思いっきり遊びたい。 みんなは全然余裕で終わりそうだけど。 オレは……かなり厳しい。 写すだけっていってもスピードには限界があるしな。 つうか腕も、ちっと痛い。 つうか目も疲れた。 ん~。 ダメだ。やろう。考えてる間にやろう。 オレは座卓に向かい、課題を続ける。 あ、あと世界史の読書感想文かあ。 誰にすっかな。 佐藤がテキトーに書いてくれるって言うけど。 世界史……。 「おい」 ん? 振り向いたら上半身裸で下にバスタオルを巻きつけた灰谷が立っていた。 「な!」 「着替え持ってきてくれるんじゃねえの?」 灰谷は濡れた前髪をかき上げた。 「う!ワリぃ」 え?オレそんな事言った? あれ、それってデフォルト? いや、でもそうか。 オレ嫁みたいじゃん。 つうか……灰谷のカラダ、エロい……いやいやよせ、オレ。 「ま、待て。ステイ。そこにステイ」 「オレは犬か」 「パンツ、新しいのもうねえから、オレのでいいか」 「ああ」 オレはクローゼットから着替えを出して、灰谷のカラダを見ないようにして渡す。 「洗濯済みだから」 「ああ。サンキュー」 「おう」 オレは座卓の前に戻る。 灰谷が服を身に着けている気配がする。 今ほぼ全裸、だよな。 海で見た灰谷の海パン姿を思い出す。 ガッチリした肩に張った胸筋。 小さめな乳首に締まった腹。 んで、オレのパン……やめろオレ。 ん~。ちょっとソワソワ。 落ち着け乙女ちゃん。 課題課題。 オレの後ろを灰谷が通り過ぎた。 ボスッと音がして、ガーとドライヤーの音が聞こえ始めた。 ベッドに腰掛けて髪にドライヤーをかけているらしい。 「灰谷オマエ、家に連絡してる?昨日とかも」 「あー、してる」 「ならいいけど」 「どうせ母ちゃん、頭お花畑だから平気だよ」 「あのファンキー母ちゃんがお花畑って信じられ……」 顔を上げて灰谷を見れば下はハーフパンツ履いてるけど首からタオル掛けて上半身裸だった! 「……オマエ、上」 「あ?」 目のやり場に困るっつうの! 「なんで上、着ねえの?」 「あ?ドライヤーかけてる間、暑いだろ。汗かくじゃん」 「おう」 そうだけど。 この間は着てたじゃん。 もう~。 オレは心の中でため息をつく。 つうかシャワー後ってなんかこう、色々想像しちゃって艶めかしいんだよ! しばらくしてドライヤーの音が止まった。 「真島」 「うん?」 「真島って」 「なんだよ」 オレは灰谷の方を見れない。 「ごめんな」 「え?」 あ、灰谷、Tシャツ着てる。 「なんかオレ、ワリぃ」 「いや、いいんだけど。つうか、なんで謝るの?」 灰谷が謝る所じゃねえよな。 オレの都合だし。 「いやだって、言ってみればオレ、自分の事好きだって言ってる男の前でおっぱいペローンって見せつけてる女って感じだろ」 「は?」 「配慮が足りなかった。すまん」 おっぱい……ペローン? おっぱいペローン? 「アハハハハハハ。おっぱいペローン。おっぱいペローン」 一日、ギチギチ課題やっててギューギューに張り詰めてたオレの頭の中が弾け飛んだ。 「アハハハハハハ」 「オマエ、人が謝ってんのに」 「いや、もう、オマエの口から……アハハハハハ」 おっぱいペローンなんてとても言いそうにない顔してるくせに。 しかもペローンてなんだよ。ペローンって。 「アハハハハハ」 笑いが止まらなくなった。 「オマエ……」 「アハハハハハハ」 オレは笑い転げた。 「イ、イタイ。腹イタイ……イタタタタ……な、涙が……」 涙を拭いながら灰谷の顔を見れば……あれ?灰谷怒ってる?いやテレてる? 「真島コラ。こっち来い。」 「なんだよ灰谷」 「いいから来い。ケツ叩いてやる」 「やめろ」 灰谷が寄ってくるからオレは逃げる。 灰谷が追う。 なぜか部屋の中で追いかけっこ。 「逃げるな真島」 「逃げるだろ普通。やめろ灰谷」 狭い部屋だ。 すぐに捕まった。 「なんだよやめろよ灰谷」 バシッ。バシッ。バシッ。 「イタイ。イタイ」 ヒザの上に載せられてケツを叩かれた。 「人が謝ってんのに」 バシッ。 「イタイ。イタイ。腹とケツがイタイ。やめろ灰谷」 「謝ったらやめる」 バシッ。バシッ。 「悪い悪い悪かった。オレが悪かった灰谷。やめろ~」 「百叩きだ。ていっ」 最後にもう一つ強めに叩かれてやっと灰谷から開放された。 「ったく。人の純情をもて遊びやがって」 それを言うならオレの純情だと思うんだけど。 オレたちの純情? オレはケツをさすりながら言う。 「オマエ、本気で叩くなよ。痛いじゃん」 「オレの心が痛いわ」 「悪かったよ。でもさ、おっぱいペローンはないよな。ポローンはあってもさ」 「あ?」 「だからさ、ポロッならわかるけどさ。ペロッじゃもう最初から自分で見せてるから、まるで痴女じゃん」 「ああ、まあな。…ってそういう事じゃねえから」 珍しい灰谷のノリツッコミだった。 「わかったわかった。ゴメンゴメン。気ぃ使ってくれてありがとな」 「おう」 「あ~ウケた」 「オマエはホントに笑いのハードル低いな」 灰谷が呆れ顔で言う。 「そうかも知れない。特にいつもボケない灰谷がボケるとほぼ百パーウケる」 「ボケてねえわ」 「ワリぃワリぃ。あ~目が覚めた。課題やるか」 「おう」 オレと灰谷は向かい合って座卓に向かった。 「オレ、後は古文だけだから終わったら……」 ダメだ。この真面目な顔がさらにクる。 「クククク。おっぱいペローン」 「真島オマエ~」 「はいはい。ワリぃワリぃ」 灰谷とまた、下らない事で笑ったり、ジャレ合えるのが単純に嬉しかった。

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