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第148話 とりあえずこのままで

時々思い出し笑いしながらノートにシャープペンを走らせる真島を盗み見ながら灰谷は思う。 こいつって、こんなに笑い上戸だったっけ。 子供の頃はそう言えばこんな感じだった。うん。 それが、いつからだろう。 ここまで気を許して笑わなくなったのは。 中学の終わり? 高校入ってから? 学校の休み時間にもいつの間にか一人でふらりといなくなってしまう事も増えた。 どこに行っていたのかと聞けば、「ん~屋上。眠くて」といつも答えたっけ。 一人になりたい時もあるだろうな、と思って、放っておいたり、でも節子の言うようにこう見えて意外と淋しがりなのはわかっていたから、適度に構うようにはしていたけど。 オレの事をいつからそういう意味で好きだったのか聞いてないけど、もしかしたらその頃からだったのかもしれない。 今、明るく無邪気に笑う真島が、多分本来の真島なんだ。 だとしたら、辛かったよな。 心もカラダも成長していく時期。 カラダ。 カラダか。 やっぱそこなのかな。 オレは……。 ふいに灰谷の手の中に、真島の尻を叩いた時の、男にしては細い腰、そしてふっくらとした尻の感触が蘇って来た。 オレ……。 いや。 情動だけに流されるとまた真島を傷つけてしまう。 カラダ。 カラダか。 わかりやすいっちゃわかりやすいけど。 それだけでいろんなものを測るのは危険だよな。 時間をくれとか言っちゃったけど、時間をかければわかんのかな。 早く答えを出さないとこの先キツイだろうしな。 真島も。 オレも。 「ククク……」 「真島~」 「ごめんって~」 でもまあ今は、とりあえずこのままでいいか。 楽しそうに笑う真島を見て灰谷は思った。

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