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第1話
僕は、αとしてとてもいびつな形をしている。
躰も、――心も。
αらしからぬ貧弱な躰。
αらしからぬ脆弱な心。
そんな風だから、Ωに間違われ、複数のαに犯されかけたこともある。
αであるはずなのに――。
僕は、正真正銘、αであるのに――。
誰も、僕を、そう見ない。
僕は、……出来損ないのαだ。
躰も、――心も。
Ωであることを望む、出来損ないのαだ。
*
神代 との関係も、そんな望の歪 さが招きよせたものの一つだった。
「望 さんのおしりの穴、すっかり俺のかたちになっちゃったね」
「…ふ…っ、く…ッ…」
抑えようとしても抑えきれずに、喉から濡れた声が押し出される。
後ろから、望の腰だけを高くあげさせた格好で貫く神代の視線が、彼を受け入れている場所に注がれているのがわかった。
「αのくせに、こんなにも美味 しそうに同じαのペニスを咥えこんで、ホント――淫乱な身体」
セックスのせいでくしゃくしゃに乱れ、皺になった頭の横のシーツをぎゅっと掴んで、無防備な背中に投げかけられた言葉の辱めに耐えた。
神代は明るく笑いながら、一定のリズムで出したり入れたりを愉しんでいる。ペニスが後孔から抜け出ても、穴はすぐに閉じることなくしばらくの間形を保つ。そして、そこが閉じ切る前に再び熱く怒張した雄芯で押し開く、という卑猥な遊びに神代は興じていた。
ねちねちと亀頭で後孔を犯され、望は最近では忘れかけていた屈辱感を思い出した。……いや、思い出させられた。
「…ぁ…、それ…もぅ、やめて…」
「なんで? 気持ちいいいでしょ? ……あなた、穴で感じる人だから」
「ちが…ッ」
「違わないよね? ほら、こうやって…」
「ぁ…あ、いや…やっ…!」
「固い先っぽでこそげるように穴を苛められるのが大好きなんだよね」
「あっああっ…あ…! やぁ…!」
彼がセックスの最中に口にするのは、決まって望を貶 める言葉であり責める言葉だった。
世の中には、セックスを盛り上げるためにわざと抱く相手に卑猥なセリフを浴びせる「言葉攻め」…などというテクニックも存在するようだが、彼のそれは違う。
彼が望に浴びせかける言葉は本当の意味での責める言葉の羅列だった。
本気で、出来損ないのαを嘲 り、蔑 んでいる。
望に対して、彼が侮蔑を抱いているのがよくわかるような、――勘違いしようがないほどにあからさまな言葉を使って貶 めるのが常だった。
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