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第6話

 狸寝入りでも決め込んだかの様に太宰は其の体勢の儘動かない。太宰は中也の返事を待って居た。――拒絶されたら――其の想いが一切無い訳でも無かった。  其れに対し中也の返答は簡素な物だった。繋いだ手を緩く握り返し、腰に回した手を強く抱き寄せると太宰の耳許に唇を近付ける。 「――――覚悟しとけよ?」  簡単に手放して遣る心算は無い。其れは何方から云い出した事だったか、交際を開始した瞬間から中也が決めて居た事だった。  飛び回る姿を見る事は嫌いでは無かった。誰と遊んでも最終的に戻って来るのは自分の処であるのだからと。ただ其の背中を見て何度も思った。もし此れが最後だったなら、二度と戻って来なかったとしたら。  ――――魔人・ドストエフスキー。  ――――手前とは因縁浅薄じゃ無ェが、今回許りは多少手前に感謝してやる。  自由に空を飛び回れる鳥が其の翅を汚された時、飛び続ける事を選択するか二度と空を望まないか。  ――――――――私、中也だけにしようかな。  太宰は二度と空を望まなかった。

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