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地の塩(ロボ) 第1話

国を愛していないわけではない。 この国は、確かに自分にとって根源だし、大切に思っている。 ただ、今の施政は許せないと思った。 若いころに戦場で見た、意思のない人形のように戦う同類を、哀れと思った。 否。 アルファでありながらその能力を活かせずに、ただ従うだけになってしまった者が。 本来なら唯一の相手を大事にするはずのオメガが、複数のうちの一人で甘んじているのを。 誰かに都合の良いようにされているのを、目の当たりにして、腸が煮えくり返るようにアツくなった。 おかしいと思うアルファやオメガ、どれもこれも、神殿の館で都合の良いように養育されて、施政者の都合の良い相手に下げ渡されたのだと聞いた。 歪められたその意思が、自発的にわいた己のものだと信じている、その姿を悲しいと思った。 腐りきったこの国を正そうと、立ち上がった王太子に協力するのは、俺の中で自然の流れだったのだ。 あの夜に、ついに王太子は兵を起こし自ら玉座についた。 国の中心にいた老害は、国王から一神官に至るまで、粛清された。 血を流すのが正しかったとは思わない。 他の方法もあったのかもしれない。 けれど、後悔はない。 少しでも早くに、解放したかったのだ。 館にいるはずの、自分の番も含めて、歪みを歪みと知らずに育てられている者たちを。 自分がいつか誰かからの恨みで身動きが取れなくなるとしても、それでも、自分たちは必要悪でいる。

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