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第2話

「後で口座に振込んどいてやる」  それだけ告げると雪路は二人分の会計を済ませ喫茶店を出て行き、一人残された葵は暫く動けずに居たが、空いたカップをさげに来たウエイトレスに声を掛けられ、漸く重い腰を上げトボトボと店を後にした。  葵が生涯で性交渉したのは一度だけ。相手は雪路だ。 『誰の子だ』  全てを否定する言葉を思い出し、胸に再び痛みが走る。  自分の子だと確信がある相手に対して雪路は逃げたりしないと葵は知っている。  つまり雪路以外の相手とも寝る人間だと思われていたのだと知り、鼻の奥がツンとなり涙が込み上げてきた。  雪路と番になりたくてその機会をずっと窺っていた。  発情期の周期を少しずつずらし、雪路の周期と合わせ、そして騙まし討ちするようにして抱かせた。  ――ずるをした罰なのかもしれない。  ちゃんとした告白もせず、既成事実を作った己の嫌らしさを責めながら、涙を零さないようにと必死に歯を食い縛った。

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