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第3話

わざと探るように言った俺に琴音ちゃんは上目遣いで、マスカラを上塗りしたような、付け睫の乗っかった重たそうな瞼をパチパチ瞬かせた。 モテることこそ男のステータスだと信じて疑わない俺だけど、人目の多いところであからさまなお誘いに鼻の下伸ばしてホイホイ返事をするわけにはいかないんだよね。 そんなところを見られた日には、歩く脳味噌下半身男とか女子に思われかねないだろう。 女子のコミュニティはすごいんだ。悪い噂はあっという間に広がってしまう。 だからこそ、ここは慎重に。 「んー、ごめん。今日はやめとく。ちょっと用事思い出しちゃった。埋め合わせ必ずするからさ」 考えた振りをして軽く片手を上げてお断りした。 「えーっ、なんかノリ悪ーい」 「ごめんな」 そう言いながら琴音ちゃんの頬をさらりと撫でてニコッと微笑む。すると琴音ちゃんは頬をうっすらとピンクに染めて「じゃあ次は絶対ね」と唇をとがらせ女子の輪の中へ戻って行った。 「お前でも断ることあるんだな」 俺の顔を見詰めてしみじみと言うのは風早健司(カザハヤケンシ)。いつもいるグループメンバーの一人。だが。

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