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終わりの雨のち始まりの雨 第1話 | 藤美 りゅうの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
終わりの雨のち始まりの雨
第1話
作者:
藤美 りゅう
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第1話
水無瀬樹
(
みなせいつき
)
は、その日大学時代から付き合っていた男に、 『彼女ができた』 そう言われ振られた。 二十歳に付き合い始め四年。その日は、その四年目の記念日でもあった。 雨が降りしきる中、傘もささずベンチに座り先程の事を思い出していた。 『先を考えると、男と付き合って行くのには限界がある。おまえも女見つけろよ』 ゲイの自分に、そう言い放ったのだ。女を好きになれれば苦労などしない。 この四年は無駄な時間だったのかと思うと悔しく、そして四年間の思い出を振り返ると、悲しかった。 手元のリュックの中には四年目の記念日と用意したプレゼントが入っていた。彼に似合うと思って選んだそれは、中性的な顔をした自分には到底合わないシックな物。 捨ててしまおうか、樹は膝にあるリュックに目を落とした。 ふとタバコの匂いがした。足元に薄汚れた安全靴が目に入り、自分に降り注いでいた雨が止んだ。 目を上げると、傘の向こうにグレーのつなぎと咥え煙草をしている唇が見えた。 「風邪引くぞ」 つなぎの男は樹の手を取ると無理矢理傘を持たせた。 「あ、あの」 慌ててその傘を返そうと立ち上がる。 「もう一本あるから」 バサっと音がすると、黒い傘が開いた。 傘で顔が見えない。 男は背中を向けた。 「待って下さい!」 樹はその背中を呼び止めると、リュックからプレゼントの入った袋を出した。 「これ、良かったらもらって下さい」 押し付けるようにそれを男に渡した。 「え?何これ?」 面食らったような声が傘の向こうで聞こえる。 「傘のお礼です」 「ええ?そんな悪いよ」 「捨てようと思っていた物で申し訳ないですけど」 男は固まったように、袋に目を落としている。 「じゃあ、貰っておこうかな。ありがとう」 男の顔が上がり、傘の向こうの顔が見えた。 細めた目は少し垂れ気味で、彫りの深い顔。黒髪の短髪で体育会系の雰囲気の優しいそうな人だと思った。 「早く家に帰れよ」 これ、ありがとう、そう言って袋を軽く上げると、公園の外へと歩いて行った。
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藤美 りゅう
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