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第1話
「葉月、みつけた!」
図書室に息を切らせながら同じクラスの男子生徒が本を読んでいる葉月の名前を呼ぶ。
「図書室では静かに!」
葉月はすかさず注意。
「ごめん、悪いけど教室にきてよ、流星が」
謝りながら困った顔の男子生徒。
流星の名前が出て葉月はまたか……という顔になる。
そして、男子生徒と一緒に教室へ。
◆◆◆
「なん言いよっとかきさん!のぼせたことばっか言うとくらすぞ」
元気な声が廊下まで響いている。その声主が流星。
葉月はすぅーと息を吸い込むと「流星!!お前いい加減にしろ!」と叫んだ。
教室の真ん中で今まさに相手を殴ろうとした流星がピタっと止まった。
ハラハラしながら周りを囲んでいた同級生達に安堵の顔。
救世主あらわる。
「今度はどーしたん?」
葉月は腕を組んで流星を見る。
「こいつが先に言いがかりつけてきたん!」
流星はビシッと相手を指さす。
「はぁ……」
葉月はため息をつくと、「もう!お前こい!」と流星の腕を掴み教室を出ていく。
喧嘩が始まってからものの数分で騒ぎは収まった。
「おい、どーなった?」
担任が戻ってきた。
「嫁がこの場おさめました」
「良かったな、嫁が登場してきて」
担任はニコニコしながら流星の喧嘩の相手の肩をポンと叩く。
「なんだよ、嫁ってー!止めんでも良かったとに、アイツへこましちゃるけん」
鼻息荒く言う男子生徒に「やめとき、流星喧嘩強いとばい?」と誰かが言う。
「前に空手とか色々習いよったちゃろ?負けるって」
自分が負ける前提に悔しそうな男子生徒。
「洋一、小学校から流星と一緒なんちゃろ?いいかげん、絡むとやめたら?」
葉月を呼びに来た男子生徒に言われた。
「うるせぇ!」
洋一は不貞腐れて教室を出ていった。
確かに喧嘩ふっかけたのは自分が先。だって、ムカつくから。
さっきの男子生徒に言われた通り、洋一は小学校から流星と一緒だった。もちろん葉月とも。
「なんだよ、嫁って先生までさ」
ブツブツいいながら廊下をドスドス歩く。
嫁は葉月の事。この学校では葉月は流星の嫁扱いされていた。
それは喧嘩っぱやい流星を止める事ができる唯一の人物だから。どんな喧嘩や言い合いでも葉月が来るとピタっとおさまるのだ。
流星はガタイが良く186cmに筋肉がそれなりについた良い身体をしていて、オマケにイケメン。なので女子生徒に人気がある。
一方葉月は色白で綺麗な顔立ちをしている。ハーフだと昔、洋一は彼をいじめた事があった。その度に流星が止めにきていた。
「洋一くーん」
同じクラスの女生徒に声をかけられ「あ?」と怖い顔で振り向くが「ね、ね、みてみて新作」と本を見せられた。
「また……流星と葉月本かよ」
女生徒に渡された本はBLの同人誌。
「だって、この学校公認カップルやん?しかもやんちゃ攻めとかわい子ちゃん受け!最高」
興奮気味に言う女子生徒に「この腐女子め!」と吐き捨てるが「読まないの?腐男子くん」と言われて「読む」と受け取った。
洋一は女子生徒と同じ倶楽部で漫画倶楽部と称しているが書かれているのは主にBLだった。
しかも、人気がある。
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