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第1話

「好きだよ。」 そう言って幸せそうに笑う誰かが居る。 顔を見たくても暗くてよく見えないと思っているうちにその姿は消えてしまうのだ。 「パパ!」 ー・・・夢?ー 「パパ、ねんね?」 「そうだな、すまない。」 そう言いながら目を開けて驚いた。 そこに居たのは侍女の山科だったからだ。 昼下がりの庭で幼い息子が侍女とボール遊びをしているのを見ながら城山桜夜(しろやまさくや)はノートパソコンを開き仕事をしていたのだが眠ってしまっていた。 息子の名前は向日葵(ひまわり)今年で3歳になる。 人見知りはしなくてよく笑いよく泣いてたまに怒ったりもするが大好きなお菓子を食べさせると上機嫌になる。 そんな大切なひとり息子と過ごす時間が少しでも欲しいと社長である父親に頼み込んで昼に1時間だけ息子の側で仕事をさせて貰っていた。 「落ち着いて何があったか話して山科さん。」 「桜夜様。申し訳ありません。向日葵(ひまわり)坊ちゃんが何処にも居ないのです。」 ー 向日葵が居ない・・・・・。ー 侍女の山科が何を言っているのか理解が出来なくて思い浮かんだのは向日葵の笑顔だった。 大切な人と同じ笑顔をする向日葵。 その向日葵が居なくなったと言われて理解できるのに数秒掛かってしまったのだ。 桜夜は侍女に執事に連絡をして屋敷内と庭を探す様にと指示を出した。 ー嫌な予感がするー 嫌な予感が気のせいである様にと願いながら庭にある池の周辺を探して歩いた。

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