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第6話

 ともあれ、そうやって大学生の勢いと大人のテクニックとで燃える雨宿りの一夜を過ごした次の日。  起きた途端にばちりと音がしそうなほど目が合っちゃって、春永が盛大に顔を赤らめた。それから誤魔化すように起き上がって頭を掻いて。 「……なんか、気まずいっすね」  向こうを向いてバスローブを探る春永を見つつ、俺も起き上がるとその体を引き寄せた。 「バージンでもねーくせに、なにを今さら」 「……それはそーなんですけど」  やっぱりこいつの背中って美術品みたいなくせに変にエロイ。その背中にいくつか残るキスマークがまた生々しくて、それに唇を当ててなぞっていたら春永が体を震わせた。昨日の熱が蘇りでもしたのかもしれない。  だから腰に手を回しそのまま強引に引き寄せて、うつ伏せにさせるように体を倒させた。別に本気でこれ以上するつもりじゃない。軽い戯れだ。 「なあ春永、昼飯っていつもどう食ってる?」 「昼飯? 大体は、会社の前に出てるキッチンカーのを適当に」 「うわーOLかよー」 「なにその偏見……んっ、くすぐったい」  ちゅっちゅっと音を立ててキスマークを辿れば、春永がくすくすと軽い笑い声を上げる。そのくすぐったい場所は性感帯の候補だってことをわからせてやりたくなったけど、今は抑えよう。大人だし。  「んじゃとりあえず今度夕飯誘うわ」 「じゃあなんで今昼飯のこと聞いたの?」 「だって昼じゃ飯食った後に昨日みてーなこと出来ないじゃん?」 「それ目的? え、なに、セフレになろうってこと?」 「あ、いや別に昼でも……わかった。昼誘う」 「わかってないし、聞いてくれます? セフレとか爛れた関係やだよ?」 「いや、フツーに付き合えばいいじゃん」 「あ……うん」  なにをわかりきったことを、と思って口にしたことに、やっぱり赤面する春永。会社で見る姿とは違って、セットもしていない前髪が下りているからか、やたらと幼く見えてなんだかいけないことをしている気持ちになる。 「とりあえず連絡先交換……あ」  かなり今さらだけど、連絡を取り合えるようにしようとそのツールを探ろうとしてふと気づく。放っていたスマホの存在に。 「……とてもしっとりしてる」 「電源入れたらまずそうか?」 「とりあえず帰ったらまずショップかなー」  なんともいえない塩梅のスマホを手に、俺たちはまずは出来ることから……つまり同じようにしっとりとしたスーツに袖を通すことから始めるのだった。

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