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第8話

「あっ、高橋くん…」 「佐藤ー!お前ー!」 スタジオに行くと、いじけて家出てもしてきたような表情で佐藤が靴の先で地面を蹴っていた。 僕の存在に気づくと無意味に逃げようとした。 「何逃げようとしてんだよ!」 「だって……昨日はほんと…」 「いいよ別に。僕は月イチでああなるんだから、こんなん毎回怒ってたら体もたん」 「ごめん……」 「だから怒ってないって」 しゅんとしている頭を撫でてやると、今までたくさんの女の子をキャーキャー言わせていたクルンとした瞳が僕を捉えた。 「…ありがとう」 「別に感謝されるほどのことでもない。それより早く練習するぞ。時間決まってんだから」 「え、あれ?2人は?」 早足で受付に行く僕の後ろをついてくる佐藤。 「あれ?聞いてない?2人用事できたからって」 「え、うそまじか……」 「は?」 「いや…だって…」 「何?」 ほぼ顔パス状態の受付で一室の鍵を借り、地下へ向かう。 「…何でもない」 「ふぅん」 少し腰を屈めて鍵を鍵穴にさすと、なぜか首元に温かい空気が当たった。 「えっ!?」 「…高橋くん…すき」 佐藤の低音ボイスが耳元にきて、気づくと部屋に詰め込まれていた。 ガチャりと中から鍵を閉める音がした。 「ちょっ、佐藤!?」 「高橋くん…番おう」 もうかわいいあいつは居ない。 瞳は雄で溢れていた。 「はぁ!?何言って…」 「ゆづと颯くんに言われた」 「何を!」 「高橋くん幸せにしてくれって」 「…どういうことだよ…」 僕は…僕は…みんなで幸せになりたくて…。 でも番の関係は4人ではなれない。 わかっていた。 嬉しい。ずっと好きだった佐藤と番える。 でも同時に苦しくなる。 佐藤の顔を見るだけで幸せで苦しくなる。 もし僕と佐藤が番ったら、ゆづや颯との関係も変わってしまいそうで怖い。 「ゆづと颯は俺と高橋くんの気持ちに気づいてたんだ。だから、身を引くって」 「…何3人で勝手な約束してんだよ!」 嬉しい気持ちと苦しさが混ざりあったマーブル。 辛い辛い。 「…泣いてるの?高橋くん」 「泣いてなんか、」 「かわいい…」 佐藤はどこから持ってきたのか大きめのタオルを床に引くと、泣きじゃくる僕の体をその上に横たえさせた。 「俺が番じゃ頼りないかな、ダメなのかな」 「いや…嫌ではない」 「…じゃあがぶってしていいの?」 そう問われた時にはもうまな板の上の鯉状態。 どうやって佐藤に脱がされたのかは分からないが、全裸にされていた。 「して…佐藤のもんにして…」 「なにそれ…やばい…」 ゆっくりと近づいてきた佐藤の唇が開かれ、首の後ろへ回る。 「あっ、あああああああ!」 電流の走ったような衝撃がからだに走る。 「高橋くんはずっと前から俺のものだよ…」 とてつもない衝撃に体は持たなくて、一瞬にしてとんでしまった。

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