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葵生川 望④
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使用済みのティッシュを捨てようとして、ベッドサイドにゴミ箱がないのに気付いた。
そうだ、ベッドサイドにゴミ箱があるのはラブホテルの仕様だ。
力尽きてベッドにうつ伏せになると、「捨ててあげるよ」と浅野がティッシュを取り上げた。
「浅野さん……ホント元気だな」
「そんなことないよ? 僕はもう歳だから一回しかできない。その一回を存分に楽しもうと頑張っているんだよ」
「……十分すぎるだろ」
「おや不満かい?」
その口ぶりは暗に「まさかあれだけよがっておいてそんなはずはないだろう」と言っている。
その通りだ。
「まさか」と答えると浅野は笑った。
予想外の激しいセックスで、望はくたくただ。「僕はシャワーを浴びてくるけど……」と言うようなことを浅野が言った気がするが、望は気付いたら眠っていた。
気付いたら朝だった。
望は裸のまま眠っていて、広いベッドの隣には浅野がいた。バスローブのままで眠っている。浅野が一応は拭き清めてくれたようだが、なんだか体が気持ち悪い。シャワーを浴びようと体を起こすと、流石に腰と尻が痛んだ。
「おはよう」と寝起きの掠れた声が聞こえる。浅野は望の起こした体を抱き寄せると、「目が覚めた時、隣にアオイがいるなんて。いいもんだね」と愛おしそうに頬を撫でた。そう言えば、こんな風に一晩過ごすことは初めてだ。浅野がこんな風に触れてくるのも、初めてかもしれない。
「できることなら、ずっとこうやって僕の腕の中だけに閉じ込めておきたいよ」
驚いて浅野を見ると、ふふと優しく笑って、望の見開いた目の横にそっと触れるようにキスをした。
「そんな顔しないで。きみを捕まえておくなんて、無理だって分かってるから」
それから時計を見やって、望にのし掛かる。いつになく甘えるような浅野の姿に、望の腹の奥の方がキュンと疼いた。
一回がせいぜいなんて嘘だ。
浅野のそれはもう硬く勃起していて、望の腹に擦り付けてくる。
「チェックアウトは十一時。ランチの予約は十一時半。もう一回する時間はたっぷりあるだろう?」
今の時間は九時を少し過ぎたところだ。
少し痛むが、できない程じゃない。甘えてくる浅野の様子がどこかの駄犬を思い出して、これじゃあ浅野に失礼だと苦笑する。
「昨日は少し激しくし過ぎたからね……優しくするよ」
「ん……あ、んっ……」
優しく蕩かすように。
望のペニスはすっかり張り詰め、浅野の舌に包まれると痛む尻のことなど忘れてしまった。一瞬前までの甘える様子はすっかりなく、いつもの余裕綽々で悠然と構える浅野の姿があるだけだ。後孔をくすぐられ、勝手に腰が動く。浅野の口の中で一回達し、そのあと浅野のペニスを体内に埋められてまたイッた。
セックスの後は予定通り、昼食に湯豆腐を食べに行った。鴨川が臨める景色も素晴らしい。浅野と一緒でなければ、こんなところへは来なかっただろう。
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