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犬も喰った喧嘩

数日前、コンビニでのバイトで、和希は旅行のために数日休みをもらうためシフトを見ながら唸っていた。 冬休みに入ると混むだろうから、その前の土日を利用して旅行に行こうと壮史と話していた。 土日2日ともとなるとシフトを代わってもらうしかないか、と考えていると、中谷が声をかけてきた。 中谷は同じ大学に通う和希より一つ年上の先輩だった。 和希が旅行に行くので土日休みをもらいたいと話すと、中谷が変わるよと快く言ってくれた。 お礼に何かと言うと、じゃあ今度部屋に来て手料理でも作って、と言うので、 そんなことならいつでも!と和希は答えた。 男女なら簡単に部屋に呼んだり呼ばれたりは当然ないだろう。 だが、同性だ。 しかもそんなにゴロゴロとゲイが溢れているとも思えない。 中谷が自分に気がある素振りなどこれまで見せたこともなかった。 自分に起こったことはそう思える。 何でもない、たかが部屋に行って料理して帰ってくるだけ。 でも自分を壮史に置き換えて考えると…嫌だ。 壮史が和希の知らないやつと、知らない部屋に行って、 2人きりでそいつのために料理を作る。 壮史にそんな気はないとわかっていても嫌だった。 俺は…バカだな。 和希は自分に呆れて苦笑いする。 武市に礼を言いホテルを出た和希は駅に向かって走り出した。

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