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溢れる家族愛

原田家のリビングで圭の宿題を見てやっていると次男の海が帰ってきた。 「海、お帰り」 「海、おかえりー」 和希と圭からの言葉に照れくさそうに小さくただいまと言った海はスポーツバッグを持って脱衣場に消えた。 海は野球をやっていて、今年の夏の挑戦が最後になる。 野球の推薦で大学が決まっているらしいが、今より成績を下げると大学には行かせないと父親から雷を落とされたらしく、最近は帰りが早くなっていた。 リビングに戻ってきた海は圭の向かい側に腰を降ろすと同じように宿題を始める。 少し髪の伸びた真っ黒な頭を見ながらウニみたいだなと笑みを浮かべていると海がふと顔を上げた。 「わかんないとこあった?」 問いかける和希を見て頭をガリガリと掻いてから海が重たい口を開いた。 「最近豪がちょっとおかしい」 「豪が?」 「たぶん、女」 「女って、彼女できたってこと?」 「いや、ヤッてはないと思う」 圭がいるのに、と思いながら背伸びをしたような言い方に口元を緩めてしまいながら和希はもう少し突っ込んでみる。 「帰りが遅いとか?」 「いや、ただ」 「ただ?」 「………キモイ」 思わずぶっと吹き出す。

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