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溢れる家族愛
美容院を後にし、和希と豪は並んで駅に向かう。
「ごめん、探るみたいなことして」
和希が謝ると豪は笑顔で首を振った。
「話そうと何度も思ったんだけど、きっかけがなくて」
照れくさそうに頭を掻く豪に海を思い出した。
「海も心配してた、最近豪の様子がおかしいって。どういう話しでもいいから2人で話して安心させてやって」
うんと頷く豪の笑顔に和希も笑顔になった。
「一目惚れじゃないんだ、確かにかわいいなって思ったけど」
駅前のコンビニで飲み物を買って、駅地下の休憩スペースに2人で腰を降ろした。
「カットモデルになった日、俺めちゃくちゃ緊張してて。
彬さんが何を言ってくれてもダメで。
そしたら風ちゃんが」
そこで言葉を切った豪が真っ赤になった。
あぁ、愛称で呼んだのが恥ずかしかったのか。
あまりに微笑ましくて上がる口角をそのままに愛称には触れずに先を促した。
「うん、それで?」
「風ちゃんがコーヒーどうですか、紅茶のほうが落ち着きますか、
好きな飲み物買ってきます、
好きな音楽聞くと落ち着くかも、何が好きですか、って必死で俺の緊張を解こうとしてくれてたんだ。
今時の歌とか知らないし、
頭にふと浮かんだのが大きなのっぽの古時計で。
さすがにある訳ないじゃん、
そしたら風ちゃんが歌ってくれたんだよ、私もこの歌大好きなんですって」
この人いい人だなぁ、好きだなぁって思った。
照れながらそう言った豪の頭を和希はわしゃわしゃと撫でた。
なぜかわからないが大声で叫びたいほど胸がざわめき、同時に暖かくなった。
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