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溢れる家族愛
マンションまで帰ってきた和希が部屋を見上げる。
灯りが付けられた部屋が主がいることを知らせている。
マンションに入りエレベーターを見ると最上階で止まっている。
降りてくるのを待ちきれず和希は階段に走った。
階段を2段飛ばしで駆け上がりながらバックを弄り鍵を取り出す。
五階まで昇り切ると少し切れた息を整えるため部屋までの通路を早足で歩いた。
鍵を開け中に入ると豪の家とは違う部屋の匂いにふと笑みが零れた。
うちの匂い。
壮史と和希の過ごす匂い。
リビングに入るが壮史の姿はない。
「お帰り」
寝室の方で声が聞こえ、和希が引き寄せられるように向かう。
シーツを替えていた壮史がちょうど終わったと和希を見て笑った。
壮史に近づき背中に腕を回し抱きつくとすぐに同じ強さで抱き締め返してくれる。
何よりも落ち着く大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込み、顔を顎に摺り寄せながら和希は淀まずに言った。
「壮史、好きだよ」
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