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第3話
「ぁんんん!奥っ」
「キモチイ?」
「んっんっ、さっきより気持ちいっ。ねぇもっと奥にちょーだいっ」
「As you wish 」
ベッドのスプリングが軋る音にケイの漏らす啼き声 、窓を叩きつける雨の音に自国より湿度の高い生ぬるい空気。
すべての感覚が絶妙に合わさり快感となる。
「はっ、んっ、リース、でちゃうっ、も、だめ、あっ!んっーーー!ヤダ、はやいのだめっ!あぁっーーー!」
「ッ!」
ケイの華奢な肩が黒いシーツの上で上下する。最奥に放たれた熱と溢れ出る粘液に幼さの残る腰が戦慄いた。
射精後のまどろみの中、リースは色白の鎖骨に散らばる赤い痕に気づき眉間にシワを寄せた。
「Did I do that ?」
「Who else ?」
混じりけもないキレイな発音だった。ケイが紡いだ2つの単語を耳にした瞬間、リースは不思議な違和感を覚えた。
「エイゴ、ジョウズ」
「あなたの日本語もね」
「リュウガクシタカ?」
「No」
「ダッタラ…」
「Who said I was Japanese ?」
「イッテナイ、デモ……」
「ぼくも観光客だよ」
小さく笑う青年にリースは首を傾げた。いたずらが見つかった子供のようなケイの表情に自分の頬が緩むのを感じる。
「Tell me more . ケイのコト、ナニモシラナイ」
「リースが先に教えて?」
梅雨の日本に到着して数時間。
リースの無計画な旅に、何が目的かも分からない見知らぬ青年が加わった。
「アシタは…」
「明日のことは明日決めよう」
これだから行き当たりばったりの旅は楽しい。
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