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第三火曜の男5
俺は二度とあのバーに足を向けることはなかった。またあの男に会ってしまったらと思うと、行く気になれなかったのだ。
だから“第三火曜の男”があの後どうなったのか、一切わからないし、知りたいとも思わない。
ただ……あれからもう数年が過ぎたのに、こんな雨の夜にはなぜか必ず思い出してしまう。
傷だらけの細い体を。
甚振って、殺してくれと懇願する、ほの暗い双眸を。
『今度は僕も殺してね、吉住くん……』
と愛おしげに囁いた、あの声を。
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