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第7話

「皆の者! ここで野営だ」  若い男が男たちに告げる。その声に皆がラクダを降り、各々で天幕を張り出した。火がつけられ、松明が煌々と燃える。闇に慣れてしまった瞳には眩しすぎて、黎は思わず瞼を閉じた。男はそんな黎に気づいたのか、松明の明かりを遮るように、黎の側に立つ。 「子供はそなたらに任せるが、手荒なことはいたすな。この者に無事町に送ると言った私の顔に泥を塗るような真似は、すまいな?」 「勿論でございます。どうぞご安心ください」  男が皆若い男に跪く。そして子供を連れて天幕の一つに入っていった。それを見ていた黎は若い男に手を引かれて、子供とは違う天幕に連れて行かれる。 「あ、あの……。僕もあの子と一緒に……」  腕を引く強い力に驚きながらも、何とか言葉を紡ぐ黎に、しかし若い男は振り返りさえしない。結局大きな天幕の中に連れられ、柔らかな敷物の上に座らされた。何故かすぐ横に彼も座る。 「子供のことは安心せよ。あれらは私の命には逆らわぬ。そなたはここで眠ればよい」  言って彼は口元を覆っていた布を取り、頭から被っていたベールも外した。  黒く艶やかな髪が肩に零れ落ちる。癖のない真っ直ぐな髪を左側の一房だけ金の輪を一つ付けている。金の輪は側面に赤や青で細かな模様が描かれている。それはまるで、考古学博物館で見たような――……。 「不思議な服だが、砂漠に入るには軽装すぎるな」  半袖ゆえに腕を晒し、砂塵が器官に入らないようにする覆い布さえも持たない黎の恰好に若い男は呆れ、鮮やかな青に染められ、蔦のような細かな柄が縁取るように刺繍されている厚手のベールを肩にかけてくれた。柔らかな温もりに包まれて、無意識の内に強張っていた身体の力が抜ける。松明の熱も合わさって、冷え切った身体が溶けていくかのようだ。 「ありがとうございます」  礼を言って、黎は横でくつろいでいる若い男を見た。そこでハッとする。先程は暗くてわからなかった。だが、彼の服装も何もかもが黎に違和感を覚えさせた。  鋭い瞳を縁取る黒いアイラインは目尻を跳ね上げるように描かれ、瞼にはうっすらと緑のアイシャドウが塗られている。アラブの民族衣装である長衣のような白い服装であるが、長衣よりもゆったりとしており、腰には二重にベルトを巻いている。その下はスカートのようにややふわりとしていて、踝まですっぽりと覆っていた。そして何よりも目を奪われたのは、彼の首元――まるでツタンカーメンの黄金のマスクにあったような、肩まで広がる半円形の襟飾り……。 「貴方は、いったい――……」  コスプレ? とも思った。しかし先程の子供もまた、見慣れぬ恰好をしていなかったか?

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