2 / 39

第1話

母が死んだ。 闘病生活は長かったのか、短かったのかは、わからない。けれど、子供の僕からすれば、母の入院生活は決して短いとは言えなかった。 ただ、痛みとの闘いから開放されたことだけは確実なことだった。 「午後11時24分、ご臨終を確認いたしました。」 そう言って、医者と看護師は手を合わせて黙祷をした。最期を看取ったものの、残された小学5年生の僕と父親の連れ子の3年生の弟、そして、2年前に他界した祖母の旦那。祖父と呼ぶには、まだ、そこまでの年齢に達していないので、僕らは、おじさんと呼んでいた。 母も祖母も結婚が早かったので、30手前で亡くなった。祖母の再婚相手のこの「おじさん」は祖母よりも10歳も年下だったので、まだ、三十代で、父親と名乗っても十分なほどの若さだった。 母はバツ2で、僕らには父親がいない。父と呼べる立場でもなくなっていた。共に家庭を持ち、新しい生活をスタートさせていた。

ともだちにシェアしよう!