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第2話

遺された僕達は途方に暮れた。 たぶん、この表現が1番正しいと思う。 義弟の父親と母は離婚していたし、 義父にはすでに新しい家庭があった。 義弟はともかく、僕は他人なのだ。 行先は『児童養護施設』しかない。 祖父という名の祖母の再婚相手の年齢は まだ、33歳、まだ人生をやり直せる年齢だ。 そして11歳の僕と9歳の義弟…… 残された3人は全員が他人なのだ。 祖父は少し考え事をしている様子だった。 僕らは母を亡くした衝動で 涙を流していたけれど、祖父は 無言で母を見つめていた。 そのうちに看護師がテキパキと エンジェル作業を始め、ベッドから ストレッチャーに遺体を移し、 霊安室へと移動する。 薄暗く、ロウソクの灯と線香の香りが 立ち込めた部屋で顔に白い布を掛けられた母は 徐々に体温を落としていく。 すがりついて泣いていたから、 如実にそれを感じてしまっていた。 ひとしきり泣いた後、しばらく無言でいた祖父が、少しの間を置いてから 「……君たちは、私が育てよう。どうだろう? 私と家族にならないか?」 児童養護施設に行かなくて済む一心で、 僕らはその申し出を受け入れた。 母の死亡届の提出と同時に、祖父ではなく、 父親として養子縁組をしたのだった。 その時、これまでの生活が守れることに 安堵を覚えた。感謝してもしきれないほど。 けれど、この時に義父が考えていたことなど、 何一つ知ることは出来なかったけれど……

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