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楽園

ヒサメについていくと、2階には油絵が乱雑に置かれていた。 でも、白い台を囲むようにイーゼルが並んでいて、どのキャンバスにも何かが中途半端に描かれている。 「抽象画のようでしゅね……わぁっ!」 模様のようだけど人の目みたいなものが描かれていたので近寄ったら、後ろから強く押されて白い台の上に倒れる。 「なにしゅるんでしゅ……ふぁ」 噛みつくように言ってヒサメの方を向くと、力強く抱きしめられた。 ぼくの好きなチュベローズの香りが君からする。 それはご主人様が着けていたものと同じ……いや、もはやご主人様だ。 「ご主人様……」 ぼくちんは媚薬を飲んだくらいにふにゃふにゃな微笑みを浮かべる。 「おかえりミツ、どこにいってたんだい?」 顔はヒサメだとわかるのに、話している声がご主人様だからなんだか変……でも幸せ。 「おしゃんぽしてきまちた」 「嘘つくな、他の男に気を許しただろう」 低い声で言い放ち、小豆色の鞭でお腹、足と叩かれる。 「あっ、ちがっ……な、なにも、アッ……ちてにゃい」 身体を震わせたぼくからサコッシュの紐を外し、アゴを掴んで睨むヒサメ。 「ミツがオレのもんだってことを証明してやるわ」 ヒサメは左の口角を釣り上げるから悪魔だと思うのに、もっと意地悪して欲しいと願ってしまうのはなんでだろう。 「これ、つけてあげる……オレの犬だもんね」 本当に目の前に小豆色の首輪を垂らして言うから、はひぃと返事をし、おすわりをしてアゴを上げる。 本当のご主人様かヒサメかもうどうでもよくて、とりあえず痛いけど気持ちいいことをしたいんだ。 「いい子だ、ミツ。ご褒美をあげよう」 首に輪を巻きつけて止めた後、ぼくの唇をまた塞ぐ。 甘い花の香りと滑らかな舌の動きでますます脳内が痺れていくぼくちん。 ゆっくりと離された時には透明な愛の糸で繋がり、レンズの奥のアーモンドの瞳が色っぽくて身体が疼いた。

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