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2年後の晩夏
「……ツ、ミツ……起きてぇ」
頭がふわふわする中、意識が浮き上がってくる。
ペチペチと小さな手でぼくの頬を叩くのは愛しの君だと、声だけでわかる。
「はひぃ」
気の抜けた返事をしながら目を開けると、茶髪のボブで覆うものがないアーモンドの瞳をぼくに向けるヒサメがいた。
「だいじょうぶぅ?」
ヒサメは高い声で柔らかな口調で言いつつ、ぼくの頭を優しく撫でる。
「気持ち良かったでしゅ」
ヘラリと笑って言うと、ふふふと笑ってくれた。
「夢の中で他のヤツに犯されたからってわけじゃないよな?」
突如、低い声で言い出すヒサメ。
「ヒサメと初めてシた時を思い出してたんでしゅ……もっともっとイジメて欲しかったなぁって」
えくぼが浮き出るくらいの笑顔を見せて言ったら、頬を掴まれて唇を塞がれる。
暴れ回る舌に相変わらずついていけなくて息が苦しいけど、一生繋がっていたいと思う。
勢いよく離されると、どっちのものかわからない唾液がぼくの口の端から垂れる。
「ミツ、下手くそだぁね」
ヒサメは左の口角を釣り上げたまま、右の人差し指で絡め取り、舐めた。
「ぼくちんの身体って、全部ヒサメで出来てるんでしゅね」
心から思ったから、素直に言ったぼくちん。
「…オレ、今お前に殺されかけた……」
俯いたヒサメは顔を上げた瞬間、ニヤリと微笑む。
「終わりにしようと思ったけど、もう1ラウンドだぁね♪」
楽しそうに言って、ぼくを敷くヒサメ。
「ぼくちん、明日腰立たにゃい……」
ヒサメは抵抗するぼくちんの顔に触れて、突き刺さるような瞳で見つめてくる。
「だいじょうぶ! あがちゃあんと介抱するからぁね」
ふふふと不敵に笑うヒサメに変わらないなと思って、ちょっと安心した。
「はひぃ」
ぼくを満たすのは、雨の名を持つ君……ヒサメ。
「ぼくには……君だけでしゅよ」
小さい声で言ったから、ヒサメは首を傾げたけど……妖しく笑って口づけをしてくれた。
<終わり>
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