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幸せが降ってきた

何回イッても下半身に埋められた振動は止められなくて喘ぎ続けるぼく。 口元をだらりと開けて、よだれが出そうになる……これが恍惚なのかな。 ヒサメはキャンバスに鉛筆を走らせながら、チラリとぼくを見てくる。 「めっちゃいいわ」 ふふふと楽しそうに笑うヒサメ。 「ぼくも楽しいでしゅ……もっともっといじめて?」 えくぼを浮かべてふにゃりと笑うと、ヒサメはぼくに近づいてきた。 「あの名前は羽鳥霈(はとりひさめ)って言って、雲叢の息子なんだけど……覚えてないんだぁね」 目の前でメガネを外したヒサメの顔を見たら、思い出した。 『こんにちは、羽鳥霈です。父がお世話になってます』 『父とは違って油絵やペン画を描いてます……たまに賞をいただいたりはしますが、まだまだです』 雲叢さんの展覧会に来てくれた息子さん……ボックスボブの髪型が印象的な20歳の男性だったはず。 「霈くん……なの?」 ビクビク身体を震わせながら言ったものだから、ヒサメはクスクスと笑った後、バイブの電源をやっと切ってくれた。 「展覧会のデザインをやって欲しくて、頑張ってたくさん認められた絵を描いて頼もうと思ったら、辞めてるんだもん……ショックだったなぁ」 優しく頬を撫でながら、高い声で穏やかに言うヒサメ。 「別れがあれば、出会いがあるって本当なんだぁね」 ヒサメはふわふわな笑みに変わった。 「もう離さないから……覚悟してな」 抱きしめられると、チューベローズの香りがまたしたけど、今度はちゃんとヒサメだと認識出来た。 「ぼくのこと、捨てましぇんか?」 ヒサメにまで嫌われたら、ぼくは生きている価値はない。 「ボロボロになっても、一緒にいようなぁ」 それを聞いたら、もう力が入らなくなった。 「はひぃ」 ぼくちんは力なく言って、ゆっくりと目を閉じた。 ああ、幸せがぼくに降ってきたんだ。

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