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第7話
「何、俺の顔に何かついてる?」
俺の視線に気づいたのか、ナオが聞いてくる。
「別に。ただ、あまりにも上手だから驚いてるだけ」
これはお世辞でも何でもなく、本当のことだった。
正直言って、今まで俺が寝てきた相手の中で、ナオは一番良かったかもしれない。
最初から最後まで、ほとんど翻弄されっぱなしだったなんて、俺には初めての経験だった。
「褒め言葉にとっていいのかな?」
「そうだよ。嬉しいでしょ?」
苦笑気味に聞いてきたナオに、俺は笑顔で答える。
そんな俺に、ナオは一枚の紙を渡してきた。
「……何、これ?」
小さく四つ折りにされた紙を見ながら俺は聞いてみた。
「俺の連絡先。カズさえ良ければ、また連絡して」
「……俺、一度寝た相手とは会わないって知ってるでしょ」
そう言って紙を返そうとした手をナオ自身に押し止められた。
「渡すだけなら自由でしょ? カズの連絡先は聞かないから」
つまり俺から連絡しない限り、ナオが俺と連絡を取る手段はないってことだ。
「わかった。その代わり、期待しないでよ」
そう言って俺が紙を上着にしまうと、ナオは優しく微笑んだ。
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