7 / 20

第7話

「何、俺の顔に何かついてる?」  俺の視線に気づいたのか、ナオが聞いてくる。 「別に。ただ、あまりにも上手だから驚いてるだけ」  これはお世辞でも何でもなく、本当のことだった。  正直言って、今まで俺が寝てきた相手の中で、ナオは一番良かったかもしれない。  最初から最後まで、ほとんど翻弄されっぱなしだったなんて、俺には初めての経験だった。 「褒め言葉にとっていいのかな?」 「そうだよ。嬉しいでしょ?」  苦笑気味に聞いてきたナオに、俺は笑顔で答える。  そんな俺に、ナオは一枚の紙を渡してきた。 「……何、これ?」  小さく四つ折りにされた紙を見ながら俺は聞いてみた。 「俺の連絡先。カズさえ良ければ、また連絡して」 「……俺、一度寝た相手とは会わないって知ってるでしょ」  そう言って紙を返そうとした手をナオ自身に押し止められた。 「渡すだけなら自由でしょ? カズの連絡先は聞かないから」  つまり俺から連絡しない限り、ナオが俺と連絡を取る手段はないってことだ。 「わかった。その代わり、期待しないでよ」  そう言って俺が紙を上着にしまうと、ナオは優しく微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!