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星虹の入り口(丞side.1)

ジリリリン   ジリリリン  軽快に懐かしい呼び出し音が鳴り響く。 急がずに出てきた男が黒電話の受話器をとった。 「はい、星虹(せいこう)診療所です」 黒髪を首筋で結わえた男は電話の相手に微笑んだ。 「かしこまりました。往診に伺います」 子供の様子がおかしい。という声は多く、仕事としてはありがたいが「おかしい」と表現するのはいただけないと常々思う。 「感情の欠けた子供、ね……」 久しぶりの個人宅への往診となる。  小学校に入ったばかりの子供というがマジックなどは好きだろうか。と考えながら蓮根のような穴を指で回して電話をかける。 「……クラウンが好きだといいな」 きっと少し驚いて、呼吸を調え、何事もないように電話にでるだろう男をイメージしてクスクスと笑ってしまった。 無表情でも、仕事のときの笑顔でも、まだまだかわいいと思うんだ。

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