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序章・禁忌の匣①

 ――後悔無き選択を  日曜、本来ならば休日である此の日に中島敦は休日出勤に巻き込まれて居る。出社しているのは敦の他、先輩である太宰治と国木田独歩のみ。国木田は必要書類を準備すると話し先んじて帰社をしていた。  途中迄は太宰と二人で聞き込みをしていた敦ではあったが、二手に分かれた方が効率的だという太宰の提案により、間もなく二人は担当を分け各自調査をしてから一時間後に探偵社で合流する事となった。  思いの外調査が順調に進んだ敦は予定より数十分早く探偵社に戻る事が出来た。  休日である事から社長はおろか事務員すらも出社は無く、今社内に居るのは国木田のみの筈であった。 「只今戻りました。 国木田さーん?」  扉を開けた真正面に社員の執務空間が有る。普段ならば入って直ぐ国木田の姿が左奥に見えるのだが、誰一人其処には居なかった。 「……可笑しいなあ」  並べられた机の前迄進んでみても矢張り国木田の姿は無い。其れどころか有るべきでは無い筈の物が其処には在った。椅子の背凭れに掛けられた太宰の外套。確かに数十分前行動を別にする時太宰が着用していたものに間違いが無い。敦よりも早く調査を終え先に戻って来て居たという事なのか、其れでも二人の姿が揃って見当たらない事は異様であるとしか表現が出来ない。厠にでも行って居るのかと敦が振り返ろうとした其の時、  ――ガタンッ  確かに物音がした。方角的には右側の会議室か。太宰は調査の結果を報告する為国木田と会議室に居るのかと納得すると敦は自らも遅れまいと会議室に歩みを寄せた。  細く開かれた扉の隙間から室内を覗く敦は咄嗟に声を挙げぬよう自らの口を両手で抑える。 「――!?」  確かに太宰と国木田の二人は会議室に居た。敦の位置からでは国木田の背中しか見えなかったが、国木田の手により机に組み敷かれて居る太宰――の脚衣と下着は床に落ちており、白い両脚が露出していた。

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