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序章・禁忌の匣④
「敦君も立派な青年であるのだし、此れは何ら恥じる事では無いのだよ」
「いやっ、そういう話では無くてですね……!」
「しっ、国木田君が戻って来た」
「ッ!!」
敦の心臓が大きく跳ね上がる。男子厠の個室に二人で居る時点で異様であるのに、斯様な破廉恥行為に及んで居る事を知られたら国木田からの叱責は免れないだろう。
かと云って太宰の手淫に拠り、引き返せない迄に主張を示す此の状態を精神統一だけで納める術を敦は未だ知らない。
触れられるだけでも痛みを催す其処を、気付けば太宰は下着から露出させ、先走りだけでも充分な量で艶めかしく光る雄を両手を以て上下に扱き始めて居た。時折先端部に指が触れる度に両脚は痙攣の様に跳ね上がり、強過ぎる刺激に意識を奪われそうになりつつも、敦は其の更に先に在る太宰の口許に視線を向ける。
無意識に欲する言葉でも口に出して仕舞ったのか、薄く開かれた太宰の唇に敦の反り勃つ雄の先端が吸い込まれて行く。他人に触れられる事はおろか玩具すら使用経験の無かった敦は初めての口腔内の気持ち良さに言葉で表現のしきれない高揚感を抱いていた。特に敏感な先端部が頬の裏側に強く擦り付けられると、脳の奥から誰かが敦へ其の喉の奥深くへ欲の熱を注ぎ込めと命令して居るかのように内側から膨張を高める。
「……はっ、ぁ……太宰、さんっ……」
腰を下ろした儘の便座の蓋から自然と腰が浮き、太宰の奥へと進みたいと無意識に律動を開始する。竿に太宰の舌が絡み付き、裏筋をなぶる様に上下する。とても人の咥内から生じているとは思えぬ粘度の高い水音が静まり返った厠に反響する。
温かい肉の壁が敦を包み込む。其れは太宰が口腔内を真空状態になる迄吸い上げた為であり、経験の浅い敦は其れが合図かの様に背中を弓形にしならせ青臭い欲望を太宰の咥内へと放った。
「……ぁっ、ああぁ……ッ!」
口淫をされるのみならず、其の相手の口の中へと精を放って仕舞った事実に敦は青冷めた。一度に放出された精は敦の体力をも奪い切るに充分で、ぐったりと便座の蓋に尻を預け上昇した呼吸を整えようと大きく胸を上下させて酸素を求める。
一方の太宰はと云うと、放たれた精を一滴も零さず嚥下すれば片手で口許を拭い敦に向けて妖艶な笑みを浮かべる。
「他の皆には内緒だよ?」
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