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プロローグ (3)

✽ ✽ ✽ 『……んん』 塞がった瞼をゆっくりと開ける。 カーテンの隙間から太陽の光が射し込んで眩しい。 ボーッとしつつ視界をいっぱい広げた。 ……どこだここ?寝室? 見慣れない天井とタブルサイズのベット。 『………えっ?』 キョロキョロと辺りを見渡した。 しかしやっぱり見覚えがない部屋だ。 その瞬間、ズキズキと頭に痛みを感じる。 なぜか体調は最悪。 眉を深く顰めながらこめかみを押さえた。 その時、ベッドの横に水のペットボトルが目に入る。 見た瞬間、ごくりと唾を飲み込んだ。 あ……これって……まさかの二日酔いか。 ふと昨日お酒を飲んだことを思いだした。 ペットボトルを手に持つと、それを一気に飲み干す。 『ぷふぁ〜!!生き返るっっ!!』 恐らくこんなに水が美味しいと感じたのは初めてだろう。 あと二日酔いってやつも初めての経験だ。 頭痛と吐き気が同時に襲ってくる。 とりあえずまたベットに寝転がり、この部屋を観察するように見渡す。 大きなクローゼットがあって、お洒落なデスクがあって、テレビもあって…… 寝室にしてはリッチすぎないか? いや、俺の家が貧乏なだけか。。 ふぅとため息を吐き、きつい体を起こしカーテンを開く。 その瞬間、眩しい日差しが照らされ無意識に瞼を強く閉じた。 そしてゆっくり開く時、驚きで目を大きく見開いた。 『………はあ!?え!?』 なんと全ての建物が小さく見える。 ……な、な、何だっ。この高さはっっ!! つい恐怖で後退ってしまった。 てか、ここ何階? 30階?……いや、それ以上か? 見たこともない風景にただただ言葉を失い、呆然と立ち尽くした。 あれ…… この高さって…マジでここホテル…とか? って、いやいやそれない。 むしろ驚きのあまり昨晩のことを思い出した。 昨日はたしか初めてのバイトで…… 望月さんとご飯に行って、このマンションに来たんだ。 それで最初はシャンパン飲んで、色んな話とかしたりして…… だけど…途中で俺が嘘ついちゃって…… いや、たしかに俺が見栄張って嘘ついたのが悪いんだけどさ? で、でも!?聞いてくれ!! だからって!!あんなことしたりして…っ…!! 望月さんとのアレやコレを思い出し、恥ずかしさで死にそうになった。 でも一番の感情は好き勝手されて腹が立ってる。 この部屋のドアを発見し、勢いでドアノブを思いっきり回した。 一言文句いってやる!! ……しかし。 『え?』 ガチャガチャと何度回したってドアは開かない。 『は?なんで? ちょっ……う、うそだろ?』 頭の中は意味が分からずパニックだ。 え?は?いやいや? ん?ま、まさか、な? 震え始めた両手で今度はゆっくりと回してみる。 ーー ガチャ しかし何度挑戦したって虚しい音しかしない。 パニックの頭を必死にフル回転させる。 はああ!?まさか閉じ込められた?! その時に望月さんが不気味に笑う顔が脳裏に浮かんだ。 そして「監禁」という言葉が横切る。 ……あの男ならあり得るかもしれない。 今度は違う意味で手や肩が震え始め、今度はドアを思いっきり叩いた。 『ちょっと! なんで鍵かけてんですかっ!!』 しかしドアは丈夫らしく、ビクりともしない。 俺の鼓動が激しく鳴り響いた。 なんだか心臓が口から出てきそう。 『おぉーい!! 誰かいないのかー!?助けてくださあい!!』 『ちょっとおおー!!望月さんってばぁっ!』 でもやっぱりどんなに騒ぎ立てても俺の叫び声だけが部屋中に響き渡った。 俺は少し赤くなってしまった拳をぎゅっと握りしめた。 はっ……うっ、嘘だろう!? てか今、何時?! 部屋にある高そうな時計で時間を確認する。 時刻は午前7時半すぎを指していた。 とりあえずホッと胸を撫で下ろす。 今日は9時から駅前でチラシ配りのバイトがある。 しかし今の俺は絶体絶命だ。 てかどうしてこうなった。俺…っ……!?!?

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